沖縄と台湾

こんにちは。築山です。

先日、休暇と調査を兼ねて台湾に行ってきました。台湾もハワイと同様に沖縄に住み始めてから捉え方が大きく変わった国です。

内地(本土)よりも近い外国

これは、那覇と中心とする同心円地図です。那覇と台北との距離は630km。つまり、台湾は沖縄から最も近い外国で、台北は福岡よりもはるかに近い大都市です。飛行機で90分。LCCの最安値を使うと片道約5,000円で行けます。余談ですが、日本のマーケットは1.3億人ですが、沖縄から見れば、同じ範囲に10億以上のマーケットがあることになります。ポテンシャルとして沖縄の持つ力は大きいですね。

沖縄と台湾は同じ文化圏?

地理的に、内地(本土)よりもはるかに近い台湾。その昔、台湾と八重山諸島(石垣)のエリアは「小琉球」、奄美諸島以南と沖縄本島のエリアは「大琉球」と呼ばれていました。実際、台湾には「小琉球」という島がありますし、空港の表示は『琉球(沖縄)』なんです。近代に入っての交流では、1930年代に林発氏らがパイナップル栽培と缶詰加工のために石垣島の名蔵地区に入植したのが有名です。
文化的にも、似た風習があります。ウチカビ(台湾ではミンジ)という、死者があの世で使うお金を燃やす風習がありますし(但し、そのお金の単位は、沖縄が台湾の10倍以上だそうです 笑)、同じ気候帯ですから採れる農作物も同じで、自ずと食事にも似たような傾向が出ます。建物や街の風景もどこか似ており「外国に来た感」でいうならば『東京<<<<沖縄<台湾』というのが正直なところです(笑)

台湾のお国事情と沖縄との共通点

国土の約7割が山岳地帯の小さな島国である台湾は、シャープを買収してあっという間に黒字化させた鴻海精密工業にも代表されるように、EMS(自社ブランドを持たずに電子機器の設計や製造を行う産業形態)を主軸に、香港・韓国・シンガポールと共に「アジア四小龍」と称されるほどの経済発展をしました。
一人あたりGDP伸率は直近10年で年平均+1.8%、日本の中でも好調とされる沖縄の約2.3倍もあります。また産業別の一人あたりGDPも(沖縄が弱い第2次産業は別としても)第1次産業、第3次産業のいずれも沖縄より高くなっています。

一方で、台湾は総人口は増え続けているものの、経済発展の原動力となっていた豊富な労働力(生産年齢人口)は2015年から減少に転じており、2012年から生産年齢人口が減少した沖縄と同様に人手不足と急激な高齢化社会に向けての対策が課題になっています。また、所得格差の指標となる台湾のジニ係数は0.338で、日本でも最も低い沖縄の0.339とほぼ変わらない数値、企業に占める個人事業主も高く沖縄とほぼ同じ割合、女性就業率は50%を上回っており、これもまた日本の平均値より高い沖縄と似ています。
こうしてみると、市井の人々の生活水準や、抱えている課題など、台湾と沖縄は似ている部分が多々あることが分かります。
(あくまで、共通点と相違点を比較することが目的なので「国と都道府県の比較はナンセンス」というツッコミはなしでお願いしますね 笑)

台湾と沖縄の似ている点
・狭い国土&島国 → 台湾:工業化(EMS)、沖縄:観光業
・増え続ける総人口と生産年齢人口の減少 → 人手不足と急激な高齢化社会
・高い個人事業率(家族経営の割合高い)と女性就業率の高さ
・所得格差

台湾から得られる沖縄成長のヒント

経済が成熟することで消費の伸びも鈍化し、次の成長戦略を考えて動き出している台湾から得られるヒントがいくつかあります。

1. デザインの力

『Made In Taiwan』(略して『MIT』!)を掲げ、特に若い世代が中心となって「台湾の製品をデザイン力で付加価値を高めて売り出していこう」という大きな流れがあります。台北には、日本統治時代の工場をリノベーションした『文創区』と呼ばれる広大なエリアがあり、そこでMIT製品の展示や販売、イベントなどを行っています。


2. 伝統の継承と革新

単に古いものを守るのではなく、その歴史や背景を十分に理解した上でアップデートしながら継承するという流れです。
例えば、築山は大のコーヒー好きなんですが、台湾はコーヒーベルト地帯に位置しており、良質なコーヒー豆の生産国としてこれから有名になると思っています。もともとは、日本統治時代に皇室に献上する目的で始まり、しばらく廃れていたのですが、近年栽培が本格化され、お茶の産地として有名な阿里山の標高2,000mで栽培されているコーヒー豆は絶品です。年400kgほどしか収穫できないため、今のところは国内での消費がメインですが、それに伴って豆にこだわったコーヒーショップも増え、従来からあるお茶文化のスタイルを取り入れた見事なプレゼンテーションをしています。それがまた逆に、お茶文化にも影響して素敵な茶藝館が出来る…という相互作用を生み出しています。

良質なコーヒー豆が採れる土は、良質なカカオも生み出します。「台湾産のチョコレートもいつかはくるだろうな…」と思っていたら、やはりこんなニュースが流れてきました。築山の勘も、案外当たるもんです。

沖縄にも、素晴らしい固有の伝統と文化、豊かな自然が育んだ農作物や特産品などが沢山あります。これらを、個人や若い力のデザインや新しい解釈でアップデートし、付加価値を上げて稼いでいく。そしてそれが、観光業を基幹産業とする沖縄の新たなブランドとして訪れる目的の一つとなっていく…。実際、そういった流れが生まれつつあります。築山は経営コンサルタントとして、そのお手伝いができればいいな、と思っています。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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