沖縄の観光業がハワイから本当に学ぶべきこと:宿泊税の導入目的と用途

こんにちは。築山です。

ついに、沖縄でも観光税(宿泊税)導入の議論が始まりました(厳密に言うと再開されました)。2021年度からの導入を目指しているそうです。

築山は、この「2021年度から」というのがキモだと思っています。以前のブログでも書いたように「ハワイ超え」で湧く観光客数を原動力として増加している観光収入も、実際のところは一人当たり消費金額の減少が続いており、単純計算すると2020年以降に減少に転じる可能性があるんですね。(2018年11月追記:その後ハワイが観光客数が上方修正し「ハワイ超え」は幻となりました)

沖縄の観光収入を増やすために最も重要な課題である一人当たり消費金額(実質は滞在日数)増加への有効な取り組みも未だ始まっておらず「2020年までは五輪特需の客数でしのいで、その後は宿泊税の導入で乗り切ろう…」という魂胆を感じてしまうのは築山の邪推でしょうか…?
ちなみに、沖縄の滞在日数を伸ばし、一人当たり消費金額を上げる具体的手段と事例については、以下のレポートにまとめていますので、興味ある方は読んでください。

沖縄の観光収入を上げるために(ハワイとの比較で見えた課題)

 

観光税(宿泊税)とは?

観光産業の世界規模で活性化によって、観光税や宿泊税を課す国や都市も増えてきました。日本では、東京都や大阪府、京都府や金沢市などで導入されており、海外でも、ヨーロッパをはじめ、マレーシアやタイ(「サービスチャージ」という名目)などのアジアの国々でも導入されています。
金額はまちまちで、日本やヨーロッパでは200〜300円程度ですが、沖縄の観光業が「お手本」としているハワイ州は、以前は宿泊料金の7.25%だったものを、たった2年で10.25%まで上げしました。ハワイの宿泊単価を考えるとかなりの金額です。

 

宿泊税の導入目的とその用途

上記リンクの新聞記事によると、沖縄の宿泊税導入の導入目的は「観光客の増加に伴って顕在化する課題を解決すること」であり、その用途は「持続可能な観光地づくり、利便性・満足度の向上、県民理解の促進」だそうです。

ハワイ観光局(HTA)によると、ハワイの宿泊税の目的は「自然資源、文化の維持、州民の生活水準向上への貢献」です。その用途ですが、年間約500億円の税収(沖縄県の県債とほぼ同額!)のうち、半分は州の一般会計予算に組み込まれ、もう半分をHTAによる世界規模の観光プロモーションやハワイ各地の自然環境保護や歴史文化保存の資金などに充てられます。

これを見る限り、両者の宿泊税導入目的とその用途は異なっているように思えます。つまり、沖縄の宿泊税の還元先は主として観光客であり、ハワイの還元先は主として州民であるということです。
沖縄にも「県民」の文字はありますが「理解の促進」とされており、ハワイのように州民の生活水準向上のために使われるのではなく、オーバーツーリズムによる弊害や県民の不満への「ガス抜きプロモーション」的に使われる可能性は十分にあります。

 

沖縄の観光業が県民の生活に貢献していない事実…

アンケートによると、県民の約4割が「観光業の発展は自分たちの生活は豊かにするとは思えない」と答えていますし、実際、観光業従事者の賃金と労働環境は依然として厳しいものがあります。


 沖縄県労働組合総連合(穴井輝明議長)は19日、県庁で会見を開き、観光産業で働く労働者に対して行ったアンケートの結果を発表した。沖縄のリーディング産業に位置...

観光収入の経済貢献度を測る指標として「雇用誘発率」(経済効果 ÷ 観光収入)というものがあります。県の発表数値で計算してみましたが、2000年から去年に至るまで殆ど上がることはなく、むしろ微減しています。
残念ながら、上述のアンケートで示された県民の肌感覚だけでなく、数字上でも「沖縄の観光収入は、関連産業以外へ波及し県の経済全体を牽引するほどの効果がない」ということが分かりました。


誰のための宿泊税なのか?

観光業において「観光客の満足度調査」を実施するのは普通ですが、ハワイのHTAは、それに加えて「州民の満足度調査」も定期的に実施しており、その結果もHPで公開されています。
観光業は自分たちの生活を豊かにしていると思うか?自分たちの自然や文化保護に貢献していると思うか?…逆に、どういった問題が発生しているか?…など、かなり細かい項目にわたって調査と分析がされています。
このことからも、ハワイが観光業の目的に掲げる「自然資源、文化の維持、州民の生活水準向上への貢献」を忠実に実行していることが分かります。「観光客は当然として、そこに住む人の満足もなければ観光業は成り立たない。そして、その観光資源は自然と文化である」。この思想と、実践と組織づくり(人材も含む)こそが、沖縄の観光業がハワイから本当に学ぶべきことだと築山は考えます。

沖縄やハワイのようなビーチリゾートに限らず、自然環境や歴史文化を観光資源とする国々は、通常、他の地域と同じなような開発や経済活動の恩恵を(ある意味で)制限や放棄をしてそれを維持する必要があり、オーバーツーリズムによる環境破壊からも護らなければなりません。

レオナルド・ディカプリオ主演映画「ザ・ビーチ」で有名になったタイ・ピピレイ島の白砂のビーチが、無期限で閉鎖されることになった。タイ国立公園野生動植物保護局(...

観光税や宿泊税の導入目的は、それに対する補填的な意味合いであり、その収入は観光客よりも、その地域の人々のために使うべきだと思っています。
その意味でハワイの宿泊税の導入目的と使用方法こそが正解であり、それを支払うだけの価値や満足を提供する対価としての(強気の)税率設定なのだと思います。実際、ハワイの宿泊税は2年間で1.4倍になりましたが、観光客数は9%増え、観光収入も11%上がっています。

沖縄の宿泊税が、単なる受益者負担の税金や観光業の財源確保を目的として、どのセクションに課税するのか?みたいな議論に終始するのではなく、観光客が満足の対価として「寄付金」や「チップ」のような感覚で喜んで払ってくれるような価値を提供し、県民の生活水準向上に繋がる使われ方がされるのを願いつつ、築山もクライアントの沖縄企業と一緒に出来ることをやろうと思います。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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