泡盛が象徴する琉球文化のアイデンティティ

こんにちは。築山です。

先日の地元新聞に、ひっくり返るような記事が掲載されていました。築山は酒が飲めませんが、酒の話題が続きます(笑)。

ご存知のように、泡盛は中国や東アジア諸国との交易で栄えた琉球王国時代から600年続く沖縄の酒(日本最古の蒸留酒)であり、だから原料は日本米でなくてタイ米(インディカ米)なんですね。つまり、泡盛は原料がタイ米(インディカ米)であることにアイデンティティがあり、記事中の言葉を借りれば「テロワール」があるわけです。ちなみに、日本ではタイ米(インディカ米)は殆ど栽培されていません。


記事中ではサラっと流されてますが、このプロジェクトの名付け親である沖縄担当相の下記の発言は問題だと思います。

宮腰光寛沖縄担当相氏は「泡盛の原産地にタイ産米と表記すると諸外国では評価がもらえないのが現状だ。本事業で泡盛と県産米を結び付けたい」と語り、協力を呼び掛けた。(記事中)

「タイ産米を県産米に変える」ということの真意が、①「インディカ米から日本米へ変える」ということであれば、これはもはや泡盛ですらなくなりますし、②「タイ産のインディカ米から県産のインディカ米に変える」であれば、タイをはじめ東アジア諸国への偏見に満ちた発言です。そもそも「タイ産米だから諸外国から評価がもらえない」のではなく「泡盛自体の諸外国からの認知が低い」のが実情です。

こんな浅薄で偏見に満ちた発言は、その場に居たシマンチュたちが会議の冒頭で批難と反論をして潰すべきで、いくら助成金を貰える可能性がある話だからといって、一緒になって議論している場合じゃありません。

 

マーケティング無きものは売れない

このプロジェクトの議論が、上記①は論外なので②であると仮定して書きますが、会議に参加した酒造関係者の発言も気になります。

酒造関係者は「200円以上になってくると厳しいが、100円だと手が出せる。県産米の付加価値が付いているので、少し高くても売れるだろう」と見込む。(記事中)

日本で生産されておらず、泡盛のためだけに後発&微量栽培する「県産米の付加価値」とは何か?「売れるだろう」の根拠は何か?この会議では綿密なマーケティングデータに基づく成長戦略の説明がされているが、詳細は秘匿性と記事のスペース上省略されているだけ…だと思いたいですね。そうでないと、税金を財源とする助成金をガンガン突っ込む決断なんて出来ませんから。

前回のオリオンビールのブログでも触れましたが、泡盛だけでなくビールも含めた日本の酒市場は、人口減少に起因して10年以上連続して減少を続けており、この先も増える見込みはありません。


マーケティングの原理原則では、こういった衰退期の市場における新規の大型投資はNGです。実際、日本の大手酒造会社は、①海外販路の開拓、②クラフトビールなど高付加価値商品の開発や企業買収、③食品やバイオ、医薬などの非酒部門の拡大、などのアクションを加速しています。オリオンビールの買収も、こういった市場の変化に対応しながらブランド価値を高めるために、創業家が外部資本を受け入れ、経営のプロに会社を任せる判断をしたというものです。

こうした市場変化と生き残りをかけた企業の経営努力を見ると、上述の「県産米の付加価値がついているので、少し高くても売れるだろう」という酒造関係者の発言に不安にならざるを得ません。もはや「安定供給が鍵」以前の話です。

 

アイデンティティ無きものはブランドになれない

繰り返しになりますが、泡盛は琉球文化を象徴するものであり、そのアイデンティティは「原料がタイ米(インディカ米)であること」です。ブランドとは、アイデンティティを分かりやすく具現化し、経営努力によって顧客からの支持を得て時間と市場競争の試練を乗り越えて生き残った存在です。つまりブランドかどうかを決めるのは、作り手ではなく顧客なのです。

泡盛のブランド価値を上げて存続させたいのであれば、①原料へのこだわりは「産地≦質」で考える、②泡盛とその酒造所の存続を市場原理と顧客の評価に委ねる、の二つが必要だと考えます。

①については、酒に限らず食の原料に関する世界的なトレンドとしては「栽培方法や安全性」や「フェアトレード」などの『理念』が重要視されていますし、それを大切にした商品は価格が高くても(「高くならざるを得ない」というのが正確な表現ですが)世界で評価される風潮は顕著になっています。

②については、上述のように、現在の泡盛市場は「需要(=顧客の支持)を超えて供給過多の状態」にあります。市場原理が全て正義だとは思いませんが、供給側を保護するだけでは消耗戦を延々と続けて助成金(税金)を無駄にするだけです。市場や顧客から本当に価値があると認められれば、生き残る形は模索されます。オリオンビールの買収もそうですし、最近では、後継者不足によって廃業した酒造所の泡盛を他の泡盛とのブレンドによって存続させる素晴らしいプロジェクトもあります

 

築山は酒は飲めませんが、泡盛酒造所の見学は大好きですし、離島も含めて見学した数もかなりになります。この先、泡盛が琉球文化の象徴の一つとして、未来永劫続いていくことを切に願っています。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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