沖縄の「公務員志向」に異変あり

こんにちは。築山です。

試験倍率はダントツの全国1位で司法試験と同じ。そのために「腰掛け就職」する人も居る…という沖縄の凄まじい「公務員志向」に驚いてブログを書いたのが約3年前。そして、このブログがいまだにアクセスランキングの上位である凄まじさに、さらに驚いています。

例えば、直近1ヶ月の、弊社ブログに辿り着いた方々がGoogleに打ち込んだ検索ワードはこんな感じです。みんな沖縄の公務員に関心あり過ぎですね(笑)

出典:Google Search Console

県民所得が全国ワースト、非正規雇用率が全国で最も高く、日本でも有数の階級格差(ジニ係数=所得再分配の不平等性を表す指標)の大きな沖縄社会において、全国1位の国庫支出金補助金を中心とした補助金を財源にした事業を多岐に行い、給与と安定した雇用が保証された公務員に憧れる人の多さは、上述の試験倍率などが物語っています。

しかし最近、その「公務員志向」にも陰りが出ています。今回は、その変化とそれが意味することについて考えてみます。

* このブログにおける「公務員」は沖縄県の上級職(「行政 Ⅰ 」の受験者 )とします

 

受験者数が減り、内定辞退率が増えている

まず驚いたのが、ここ数年で受験者数が約4割も減り、内定辞退率が約1.5倍に増えていることです。そしてこの状況は2017年度から顕著になっています。内定辞退率の増加を受けて、最終合格者の数を増やした(バッファを増やした)ため、試験倍率もピーク時の23.4倍から10.1倍まで下がっています。

沖縄の「公務員志向」が、主として給与と安定雇用の保証に因るのであれば、この状況の原因は、沖縄企業の給与が増加し、雇用状況の改善・安定化によって、公務員になることへのインセンティヴが相対的に下がった…ということが仮定されます。以下、データを基に具体的に見ていきましょう。

 

原因①:企業の給与が増加した

沖縄企業が、20〜24歳(公務員試験を受験する中心の年齢層)に支払った給与額を調べてみると、2018年に1万2千円も増えました。上述の内定辞退率の急増と似たような動きをしており、給与の増加が公務員の受験者数減少と、内定辞退に影響を与えている可能性が考えられます。

 

原因②:雇用状況が改善・安定した

円安効果による経済成長と生産年齢人口の減少によって、有効求人倍率は上昇を続け、2016年度には1.0を突破しました。全国最下位とはいえ、正社員の有効求人倍率も同様です。失業率も大幅に改善し、復帰後の最低値を更新しました。したがって、こうした雇用状況の改善と安定化も、公務員の受験者数減少と、内定辞退に影響を与えている可能性が考えられます。

こうして定量的な数字を見ると、沖縄の「公務員志向」の陰りには、①沖縄企業の給与が増加と、②雇用状況の改善・安定化によって、公務員になることへのインセンティヴが相対的に下がったため…という仮説はある程度正しいことが分かりましたが、さらに、定性的な部分で「公務員離れ」に拍車をかけるであろう要因があります。

 

原因③:価値観の変化と厳しい労働環境

従来は、厳しい労働環境や、北部や離島への転勤可能性という県職員特有の事情を補っていた民間企業との給与差が縮まってきたこと、それに加えて、近年の新卒者が職種を選ぶ際に重要視する「ワークライフバランス」が、受験者の数減少と内定辞退率の増加に影響しているそうです。

さらに最近、コロナ禍の対応に起因する精神疾患に因る休職者の増加や、残業代未払いといった、ブラック企業のような事態が立て続けに起きていることも、今後、この状況に拍車をかけるであろうと予想されます。


* もっとも、精神疾患に因る休職は、行政だけでなく教育現場など、沖縄の様々な職場で深刻化しています。背景には全国4位という沖縄県の高い精神疾患罹患率があり、職場の問題というよりは、沖縄社会の構造や環境に起因する部分が大きいと考えています。詳しくは下記ブログをご確認ください

 

かつては、沖縄社会の安定層の一角を占め、多岐に渡る業務領域で沖縄に貢献できる、公務員という人気の職種も、世の中の変化によって曲がり角を迎えているようです。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

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