事業コンセプトの作りかた:沖縄で永続きする企業、しない企業

こんにちは。築山です。

ここ数日、立て続けに、事業コンセプトの作り方に関するコンサルティングをしています。依頼くださるクライアントは、いずれも新規でビジネスを始めようとしている会社ではなく、既にそれぞれの属する沖縄の業界平均よりも高い業績をあげてらっしゃる会社です。

成功しても、現状に満足することなく自社のビジネスをさらに良いものにするために費用を払って客観的な視点で考えを整理する(=コンサルティングを受ける)…。この姿勢こそが業績の良い理由を体現していると思います。そして、築山もコンサル屋として、そういった経営者からご相談を受けることを光栄に思っています。

なぜ、事業コンセプトを考える(考え直す)のか…?経営者の方々とお話して感じたのは「事業の”これまで”と”これから”を整理したり可視化することで、今後の会社や経営者としてのブレない軸を作りたい」ということでした。

 

沖縄県で企業を永続させる難しさと、事業コンセプトが大切な理由

下の図を見ていただくと分かると思いますが、沖縄県は開業率&廃業率共に全国1位で、全国平均と比べて開業率が1.4倍、廃業率も1.2倍です。(余談ですが、沖縄県の高い廃業率には、個人&家族企業率が多い故の、全国ワーストの後継者不足地域という背景もあります)
良く言えば「事業の新陳代謝が活発な地域」ですが、実際のところは「起業しても永く続けるのが難しい地域」(複数の沖縄の経営者談)という方がしっくりくるでしょう。

当然ながら、沖縄県の企業存続率も全国平均よりも低くなります。事業所比率の高い(=企業数の多い)産業ほど競争が激しいですから存続率も低くなり、数字にもその傾向が出ています。具体的には「生活関連・娯楽業」「医療・福祉業」「飲食業」の存続率が特に低く、全国より永く存続しているのはわずか3業種だけです。

離島地域が故の、地理的なハンディや限られた内需、全国最下位の所得や賃金と個人&家族企業が多い故の脆弱な経済基盤(個人企業比率は71.4%で全国1位。東証一部上場企業はたったの4社)。沖縄は経営者にとってタフな地域のひとつであることは間違いありません。

沖縄で企業を永続させるためには、提供する商品やサービスを、地域特性を活かした独自性や外部に(県外や海外に)通用するクオリティで、客観的な裏付けや評価に基づいたマーケティングを以って創り出す必要があります。そのためにも、事業コンセプトを考えて可視化し、ブレない軸を持つ必要があるんですね。

 

事業コンセプトとは? 企業ビジョンとの関係

コンセプトとは『概念。観念。創造された作品や商品の全体につらぬかれた骨格となる発想や観点。』という意味で、ビジョンとは『将来のあるべき姿を描いたもの。将来の見通し。構想。未来図。未来像。』という意味です。(いずれも出典は「大辞林」)したがって、事業コンセプトと企業ビジョンの関係はこう考えることができます。

企業ビジョン  ⇒ 事業を通じて実現する良い未来と自社のありかた
事業コンセプト ⇒ 事業ビジョンを実現するための具体的なやりかた
企業ビジョンと事業コンセプトは、目的と手段の関係です。コンセプトを考えるためには、まずビジョンがないとダメなんですね。

「流行」はコンセプト「ブランド」はビジョン
「成長」はコンセプト「永続」はビジョン

ビジョンが曖昧だとコンセプトも曖昧になりますし、そもそも「全体をつらぬく」ことさえも難しい、弱いものになります。
また、現代のように目まぐるしく変化する世の中では、技術革新や価値観の変化によって、自社の商品やサービスが事業が陳腐化する可能性も頭に入れておかなければなりません。場合によっては事業コンセプトを変える必要も出てくることもあるでしょう。

「流行」や「成長」は一過性であり(そこに辿り着くことも難しいですが…)ずっと良い状況が続くことは決してありません。その趨勢やサイクルを何度も乗り越えることで企業は「永続」し、その一部は「ブランド」になります。企業ビジョンは「自社が常に拠って立つもの」です。


 

企業ビジョン・事業コンセプトの考えかた

企業ビジョン・事業コンセプトの考えかたで参考になるのが、サイモン・シネック氏の「ゴールデン・サークル」というものです。図で表してみました。

企業ビジョンは ①whyにあたります。なぜ、事業をやるのか…?これは、自分の価値観や、それを形成するに至った原体験、美意識などを言語化していきます。

事業コンセプトの部分が②と③。まず、 ②how です。それをどうやって実現するのか? 多くの場合は、ここに提供する商品やサービスが入ります。「商品やサービスありき」じゃないのがミソです。全ては ①why の実現のために合致しているか?ということです。

最後に ③what です。②をどのレベルで実現するのか? その品質やスペック、それらをプレゼンテーションするデザインやトーン&マナーがこれに当てはまります。ここは具体的な表現ができる、いわゆる企業や事業の「外見」ですね。

顧客から見えるのは、主に②と③ですが、世の中で「ブランド」と言われる企業では、そこから①を感じ取ることが出来ます。繰り返しになりますが、コンセプトはビジョンの実現のためにあります。どれだけ美しくて素晴らしいものでも、ビジョンと合致しないものや接点が曖昧なものは、切り捨てられます。

 

事業コンセプトを可視化することの意味:「外見は一番外側の内面」

企業の人間に置き換えれば、①が思考や内面、②が身体、③が服装やスタイルです。いくら高級な服(③)を着ていても、身体(②)がたるんでいれば似合いませんし、そもそも内面(①)が不健全な人は人から好かれません。分かる人は見抜きますし、見抜かれなかったとしても、こうしたチグハグさが醸し出す空気や薄っぺらさは、本人が思っている以上に人に伝わっています。

逆に「服装や体型なんかはどうでもいい、自分の内面を常に磨いてさえいれば十分」という考えもあります。人であれば素晴らしいマインドですし、ビジネスではスペシャリストや職人向きです。しかし、事業経営とは、顧客に知ってもらい、気に入ってもらい、対価を頂くことで、顧客にさらに良い価値を提供する行為ですから、それが得意な人に任せる方が良いでしょう。

企業ビジョンと事業コンセプトを可視化することの大切さはここにあります。目に見えることで、その一貫性が、顧客だけでなく経営者自身と従業員にも伝わること。それが意思決定や行動の「拠りどころ」になるものでなければなりません。「外見は一番外側の内面」なのです。

しかし、これは言うほど簡単ではありません。様々な角度から質問を投げかけもらい「そもそも、これでいいのか?」と自分と向き合い考えながら、それを整理し、人に伝わるレベルで可視化してくれるパートナーが必要です。(そしてクタクタに疲れます…)
コンサル屋として、築山の仕事はこの部分です。自分自身が事業主としてビジョンとコンセプトを考えて可視化した、沖縄でのコンサルティング業の創業計画書を公開していますので、ご興味のある方はこれを見ていただき、気に入った方は是非ご相談ください。


築山 大

琉球経営コンサルティング

 

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