デザイン経営について 〜弊社コンサル事例〜

こんにちは。築山です。

去夏の講義が好評だったということで、沖縄県産業振興公社が主催する「沖縄型グローバル産業人材育成事業」のセミナーで再び講師をしています。今回は、グローバルビジネスの潮流を見据えてキーワードとなる言葉(お題)をいくつか与えられ、それに関して講義を行う形式です。

第1回目の講義は『デザイン経営』。恥ずかしながら、築山はこの言葉を知りませんでした(笑)慌てて調べたら、経済産業省が2018年に提唱していることを知りました。

経済産業省「デザイン経営宣言」より

これによると『デザイン経営』は、ブランディング(顧客が企業と接点を持つあらゆる体験に、その価値と意志を徹底させ、それを一貫したメッセージとして伝える)と、イノベーション(供給側の思い込みを排除し、対象に影響を与えないよう観察し、潜在的ニーズを企業の価値と意志に照らし合わせる)という二つの要素から成り立っているそうです。

 

『デザイン経営』は新しい概念ではない

この『デザイン経営』の二つの要素を聞いて、ちゃんと勉強している方ならピンとくると思います。ブランディングの定義は、20年前にドラッガーが著書『ネクストソサエティ』で語った「MVV経営」(MVV=ミッション・ビジョン・バリューの略)であり、イノベーションの定義は、世界市場における日本製品の価値が相対的に低下した時期に従前の反省と共に登場した「マーケットイン」の概念に似ています。つまり、既存の概念や言葉のラベルを貼り替えたものに過ぎないことが分かります。


 

言葉に惑わされず本質を理解する

上述の経済産業省の「宣言」以来、全国の様々な経済団体や、経営コンサルタント、デザイナーがセミナーを開催しています。試しに「デザイン経営・セミナー」でGoogle検索してみてください。たくさんのセミナー案内が出てきます。中には有料、それも高額なものもあったりします。

言葉に惑わされず本質を理解しましょう。ビジネスの世界には、ちゃんと勉強していれば、お金も時間も無駄にしなくて済むようなことが沢山あります。今回の講義でも、冒頭にこの話をしました。

特許庁の資料には、日本を代表するような企業の「経営陣に理解してもらえる言葉でデザインを説明する」や「経営層の過去の経験とデザインの活動を紐づけて理解を促す」という「課題解決事例」が大真面目に書いてありますが、常にドラッガーなどのビジネス書などを読んで勉強している経営者が、部下から『デザイン経営』の話をされたら「分かってないのは君だけだ。単なる言い換えじゃないか、私をバカにしているのか?」と怒りますね。

特許庁「デザイン経営の課題と解決事例」

 

デザインの意味は「意匠」ではなく「設計」

また、日本人の多くが、デザインという言葉を「意匠」という意味で理解しており「設計」という意味が抜け落ちていることにも問題があると思います。

最近は、ブランディングという言葉もずいぶんと軽く扱われている気がしています。ブランディングは、それっぽくデザインされたロゴや、スタイリッシュなWEBサイトを作るだけでは実現しません。そもそも、ブランディングをしたら売れる…という考え方に違和感があります。売れていない商品やサービスがブランドと認められることはありませんから。

同様に、何らかのか技術や発明をするだけではイノベーションは起こりません。それらが社会の課題やニーズに合致し、新しい価値が生まれることがイノベーションです。例えば、産業革命は、蒸気機関の発明ではなく、それが鉄道や船に利用され一度に大量の荷物や人が移動することによって実現しました。大切なのは、社会の課題やニーズを見つけ、技術や発明を結びつける力(IDEA)です。

ブランディングにしろ、イノベーションにしろ、単にそれを行う担当者をつけたり、部署を作ったりするだけでは実現しないことは明らかで、企業全体での取組みが必要なことが分かります。デザインという言葉を「設計」と理解しなければならないのはこれが理由です。

つまり、『デザイン経営』とは、社会のニーズや未来を見据えたマーケティングで事業を「設計」し、それを実践できるよう組織やリソースの配分を変え、それらが顧客に支持されることなのです。

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