こんにちは。築山です。
先日、沖縄県産業振興公社が主催する「沖縄型グローバル産業人材育成事業」での講義を終えました。余談ですが、先月は日本経済社が主催する『リゾートビジネス研究会』でも講演を行なっており、今期は本業のコンサルに加えて講演や講義依頼も増えました。
弊社が提供する人材育成サービスは、単発のセミナーや座学ではなく、業務の実践を通じて行う実践&並走型のコンサルティングなので、当初、講師の依頼を受けた時には辞退しようと思ったのですが『グローバルだからこそ、ローカル(沖縄)の価値を客観的に理解し付加価値創出に繋げる力(マーケティング力)を養う講義が必要』という講義の趣旨とスタッフの熱意に共感し、お手伝いすることにしました。
講義プログラムの作成にあたっては、可能な限り典型的なセミナー形式を払拭し、学んだことを直ぐに自分の業務で活かしてもらう仕掛けをたくさん作りました。弊社のいろいろな提案を実行してくださった産業公社のスタッフとモチベーション高い参加者のおかげで「行動が変わる講義」をすることができました。
人材育成に金を使わない日本企業、学ばない日本人
残念ながら、日本の人材育成は先進国の中でも最低レベルです。企業の能力開発費は米国の20分の1ですし、日本の成人の生涯学習率は先進国で最下位です。ここ30年間の日本経済の凋落は人材教育を軽視したことによる…と言っても過言ではありません。
恵まれた環境にも関わらず上がらない沖縄の労働生産性と賃金所得
そんな中にあって、沖縄県の人材育成はとても恵まれた環境にあります。沖縄振興税による人材育成事業予算は、同じ人口規模の滋賀県や、同じ県民所得規模の鳥取県の約2.4倍もあります。事業あたり数千万円の補助金を使って、さまざまな企業や機関がさまざまな人材教育プログラムを実施しており、その充実ぶりは全国一だと思います。
こうした恵まれた環境にも関わらず、沖縄県の労働生産売上は全国42位、賃金所得は全国44位と、依然として全国の下位に沈んでいるという事実は、問題の根本が育成される側ではなく育成する側、つまり企業や経営&マネジメント層にあることを示唆しています。
増益だが賃上げには反対の沖縄企業 ?
先月、地元紙の報道で対照的な二つの記事が掲載されました。一つは、コロナ禍にも関わらず、沖縄県の増益企業が過去5年で最多だったことです。増収企業こそ減少しましたが「コロナ関連の助成金などによる営業外収益の増加や経費(人件費)の圧縮」によるものだそうです。
もう一つは、10月から施行される最低賃金の賃上げに対して沖縄の経営者団体が、コロナの業績不振を理由に賃上げを4月まで延期するよう求めたことです。中には「国の中小つぶしとしか受け止められない。賃金を上げろという以上、支援がないと企業は雇用すら維持できない」という経済団体のコメントもあるようです。ちなみに、沖縄の最低賃金は賃上げ後の820円でも全国最下位です。
助成金をもらって増収した沖縄企業がある一方で、賃上げするなら助成金をくれという沖縄企業があるという矛盾を、我々はどう解釈したらよいのでしょうか?(同一企業でないと思いたいです)
何らかの人材育成を行っている沖縄企業は全体の1割強
沖縄県の「労働環境実態調査」によると、従業員数10人以下の企業で、何らかの人材育成を行っている企業はわずか8.0%、従業員数100人以上の企業でも52.5%しか人材育成を行っておらず、全体で15.7%に留まっています。これは、多くの沖縄企業に、人材育成をする環境や文化が備わっていないことを表しています。
また、若年層の人口減によって求人倍率は上がっているにも関わらず、年代別失業率は10〜20代前半が全国平均の2〜4倍と突出して高く、新卒者の3年以内離職率も全国平均の1.3倍です。このことから、沖縄の労働者の少なくない割合が、若いときに転職を繰り返して職場に定着できない(しない)ことで、その時期に習得すべき社会人やビジネスパーソンとして必須の基礎的知識やスキルを学ぶ機会を逸し、その後、人材育成をする環境や文化が備わっていない企業でキャリアを積み、マネジメント職などに就いていく…という姿が想像されます。こうした状況にある沖縄企業の労働生産性が低くなるのは無理からぬことだと思います。
人材育成の本質は、人材育成する人を育成すること
少し前に、出世する人材の共通点が「入社して1番最初についた上席が優秀」というツイートが話題にまりましたが、これは人材育成に関して、育成される側以上に育成する側の教育が重要ということを示しています。
野村証券が「支社長まで出世する人材の共通点」を数億円かけて外コンに調査依頼した。調査の結果としては、学歴や世帯年収や親の職種は関係なく「入社して1番最初についた上席が優秀」が共通点だった。スクリーニングのために採用費に投資する以上に受け入れ側の教育に時間かける事が重要という話。
— きもと【タイバンコク】 (@wombathai) June 14, 2021
また、海外赴任から帰国した社員が、赴任期間で得た経験やスキルと帰国後の仕事内容や自社の風景とのギャップに違和感を感じ退職してしまうことが多いという話は、人材育成というものがスポット的に行われたり、人事部やアウトソース先に丸投げされるものではなく、会社全体で継続的に行われていくものであることを物語っています。
つまり、人材育成の本質は、人材育成する人を育成することであり、その環境や仕掛けを会社全体に作っていくことなのです。
カネは有限であり、モノは経年劣化します。ヒトだけが無限に成長でき、付加価値を生み出すことが出来るのです。弊社が提供する人材育成サービスは、単発のセミナーや座学ではなく、業務の実践を通じて行う実践&並走型のコンサルティングである理由はここにあり、経営者や会社全体で意志を持って人材育成に取り組む企業様のサポート行っています。
未来への投資である人材育成について、本気で取り組みたい企業様はお気軽にお問い合わせください。
築山 大
琉球経営コンサルティング