沖縄Uターン希望者からの相談

こんにちは。築山です。

毎年この時期になると、内地(本土)で住んでいるシマンチュ(沖縄県民)からUターン移住の相談をいただきます。旧盆で帰省し家族や友達と話したり、自分自身について考える時期なのだと思います。去年と今年で計10人ほどお話ししましたが、興味深いことに、相談に来る方々の属性と状況はほぼ共通しています。

属性
①30〜35歳
の男性
②沖縄の大学を卒業後、東京や大阪で就職
③独身が半数、既婚者が半数
④既婚者は配偶者の多くが沖縄県外の出身で乳幼児の子供あり

状況
⑤沖縄にUターンしようと考えている
⑥5割は自分の意志、3割は実家からの要請、2割は経済的理由
⑦戻ったら「沖縄のためになること」「沖縄を良くすること」をしたい
⑧既婚者の場合、配偶者の多くが移住に積極的ではない
⑨最も不安な要素は「収入の減少」

どの方々も、沖縄へのUターン移住を考えて、いろいろと調べていくうちに築山のブログに辿り着き、内容に共感いただき、HPの問い合わせフォームやMessengerなどで面談の依頼をくださります。
彼等の相談内容もほぼ共通していて、沖縄では数少ない戦略系の経営コンサル屋である築山から(戻ったら自分が働くかもしれない)沖縄の企業や経済の詳細や課題を教えて欲しい、沖縄という市場で経営コンサル屋として独立起業できたノウハウを知りたい…というものです。

 

沖縄県民の高いUターン移住率

実際に数字を調べてみると、まず沖縄県民の県外移住率が全国平均とほぼ変わらないことに驚きました。島嶼地域という地理的事情や地元志向の強さから県外移住率は低いと予想していましたが、これは築山の思い込みによる誤りでしたね。そしてずっと県外に住み続ける人は少なく、何と県外移住経験者の7割はUターンしており、全国でもダントツの1位です。
ちなみに、築山の面談者は、自らの意志でUターン移住を考えている方々は半分程度だったので、この圧倒的なUターン移住者の多さの理由が、よく言われる「沖縄県民は郷土愛が強いから」かどうかまでは分かりませんでした。

 

Uターンへの不安や課題と配偶者の賛同が得られない理由

Uターン移住者の一番の心配事は収入の減少です。実際、沖縄県の平均年収は全国46位で、東京都の6割程度、大阪府の7割程度しかありません。一方で、消費者物価指数は全国平均より高いので生活はかなり苦しくなります。
もし、東京や大阪で暮らしている収入と生活レベルを維持するのであれば、親や親戚家族と同居して家賃を節約しつつ、独身者の場合は仕事の掛け持ち、既婚者の場合は共働きが必要になると思います。
沖縄の移住希望者への情報の多くは「景気が良いので求人は多い」という点ばかりを強調して、肝心の給与面についての言及が少ないのが実情です。ちなみに、下記サイトに書いてある「IT産業」の実態はコールセンターやソフトウェア開発の下請け的な仕事が殆どで、労働生産売上や給与は全国平均のほぼ半分です。単に「人を増やす」ことではなく「質高く生活できる人を増やす」という発想でのアピールやアプローチを期待したいですね。



これに加えて、全国ワーストの離婚率や、DV発生率などに象徴される女性にとって生きづらい環境や文化、学力テストの結果に象徴される教育の質など、内地の都市部から移住した30代の夫婦が生活して子供を育てていくには懸念事項が沢山あり過ぎます。

彼等の中には「配偶者の積極的な賛同が得られない」と悩んでいる人がいますが、話を聞いていると、そもそも彼等自身がそういったことを配偶者と同じ目線で考えていない(もしくは認識さえしていない)ことが原因だったりします。某沖縄企業のUターン転職者の座談会で、ある男性の下記発言を読んだときは倒れそうになりました。これを読んだ、あるシマンチュの女性は「内地に住んでいても、中身は典型的な沖縄の男。」とバッサリでした…。

新潟県出身の妻は、東京での生活を気に入っていたので、沖縄の魅力的な部分だけを話して半ば強引に連れ帰ってきました。このため、伝えてきた内容と現実のギャップに半年間は愚痴を言われ続け、いまでも夫婦げんかの折には「あなたが連れてきたんでしょ」と決め台詞を言われ頭が上がりません。自業自得ですが(苦笑)

 

沖縄を良くするのであれば、まずは自分の足元と周囲から

Uターン移住を考えて築山に相談に来るシマンチュたちは、口を揃えて、東京や大阪での仕事や生活の経験を活かして「沖縄のためになることをしたい」「沖縄を良くしたい」という郷土愛を熱く語り、築山にアドヴァイスを求めてきます。

彼等全員に伝えているのは、移住を考える自分や配偶者が感じている不安や課題は、同様に沖縄に住む県民の抱えている不安や課題である。つまり、それがあなた方が「沖縄を良くするため」に解決すべき最初の課題である…ということです。男性には天下国家を語りたがる人が多いものですが、自分自身や配偶者の課題を解決出来ない人間が、沖縄の課題を解決できるわけがありません。

もう一つ伝えていることは、相手を「説得」するのではなく「共感」を得ることで解決をすべきです。そしてそのためには、ニュートラルな視点で考え行動すること、あなた自身が共感力(他者への想像力)
を身に着けることが大切である…ということです。

いくら全国平均並みとは言っても県民の半分は県外での生活経験がありません。さらに沖縄の大学進学率は全国最低で、6割(以前は7割)は大学で学ぶ機会を得ることができません。つまり、あなた方が、沖縄での進学を経て東京や大阪での仕事や生活で得た経験は、県民の大半にとって「当たり前のこと」ではないのです。
「沖縄のためになることをしたい」「沖縄を良くすることをしたい」と語っているにも関わらず、彼等と話していると、こうした沖縄の現状をあまりにも知らな過ぎる方々が多いことにも驚きました。県外での生活が長いので仕方がない部分もありますが…。

だからこそニュートラルな視点や共感力に基づく行動が必要で「東京では」「大阪では」という単純な比較論を語ってしまえば「共感」を得ることは難しいと思います。

築山も経営コンサル屋として、クライアント企業の売上や利益、労働生産性の改善を通じて、関わった方々の給与や働き方の可能性を広げることを積み上げて沖縄に貢献していく所存です。いくら素晴らしい「思い」を語っても、(築山も含めて)多くの人は「成果」を出した人間や「共感」した人間の言葉にしか耳を傾けないものですから…。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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