それでも世界は良くなっている:『ファクトフルネス』を読んで

こんにちは。築山です。

話題の書を、かなり遅ればせながら読み終えました。

 

 

簡単に言えば「人間は、いかに物事を自分の見たいように見ているか?」ということであり、その原因は人間の「ドラマチックな本能」と「ドラマチック過ぎる世界の見方」にあると説いています。そして、以下のような「思い込み」について、実際の数字(ファクト)を挙げて実際とは異なることを述べています。

・分断本能:「世界は分担されている」という思い込み
・ネガティヴ本当:「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
・直線本能:「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
・恐怖本能:危険ではないことを恐ろしいと考えてしまう思い込み
・過大視本能:「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
・パターン化本能:「一つの例が全てに当てはまる」という思い込み
・宿命本能:「全てはあらかじめ決まっている」という思い込み
・単純化本能:「世界は一つの切り口で理解できる」という思い込み
・犯人探し本能:「誰かを責めれば物事が解決する」という思い込み
・焦り本能:「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

ビジネスの課題や問題を、数字で把握し数字で語ることを生業とする経営コンサル屋として、この本に書かれている内容は100%同意です。おそらく、海外の大学のリベラルアーツの講義で学ぶような内容ですね。

 

感じた違和感:「数字に基づいて見ること」を「消費」する人たち…

しかし、この本がベストセラーになってから、SNSなどで違和感を持つやりとりが増えています。例えば、高齢者による巻き込み事故の報道が過熱すると、必ずといっていいほど「いや、高齢者の事故の数自体は減ってるよ…」という「ファクト」を挙げているようなものです。

「自分は数字に基づいて冷静に世の中を見てますよマウンティング」「本能に支配され不安になっている人たちを下に見る論拠にしている」
とでも言うべきでしょうか?「…だから何?」と思ってしまいます。この本が伝えたいのは、そんなポジショントークやネガポジ論を「消費」することではありません。

 

「考え続けるための手段」としての数字と「考え続けることのめんどくささ」と付き合う覚悟

数字を見なければ世界を知ることはできませんが、数字だけでは世界を理解することはできません。多くの人々が上記のような思い込みに走るのは「考える必要がなくてラクだから」です。この本はラクな方に逃げたりするのではなく、様々な角度から「考え続けること」の手段としての数字(ファクト)であり、その「めんどくささ」と付き合う覚悟の重要性を説いています。

 

極限状態での活動と熟考の果てに辿り着いた「それでも世界は良くなっている」

この本が世界的なベストセラーになった理由は、内容の素晴らしさだけでなく筆者のハンス・ロスリング氏の『遺言』でもあることです。

彼は、スウェーデンの国境なき医師団を立ち上げた医師であり、アフリカの最貧国での医療活動に従事していた公衆衛生の専門家です。紛争による政情不安や物資不足、人々の無理解などと闘いながら「目の前にいる回復の見込みの低い子供への治療を後回しにすることで数百人の子供を助ける」ようなギリギリの意思決定を迫られる毎日を長年経験してきた方です。

本書は、そんな彼が、世界の諸問題を解決する上での障害となっている「人々の思い込み(知識不足)」を無くすために立ち上げたギャップマインダー財団の活動として世界各地で話してきたことをまとめた内容となっています。

彼は執筆中に末期のすい臓がんが見つかりました。「この本は、私にとって本当に最後の闘いだ。何かひとつ世界に残せるとしたら、人々の考え方を変え、根拠のない恐怖を退治し、誰もがより生産的なことに情熱を傾けられるようにしたい。」(P.23)という決意の元に本書に取り組んでいます。

本書に掲載された多くの数字(ファクト)とそれに関する考察は、彼が長年の極限状態での活動と熟考の果てに辿り着いた「それでも世界は良くなっている」という最後のメッセージなのです。

本書を読んで、根拠のない希望を持たず、根拠のない不安も持たず、いかなるときも数字(ファクト)に基づき考えて行動し続けることが世の中に役立つと信じてコンサルティングを行っていこうと思いました。

本当に名著なので、皆さんも読んでみてください。

ちなみに、読者の多くが「自主的に」報告している本書冒頭の『チンパンジークイズ』の築山の正解数は5問。辛うじて、チンパンジー以上(=上位10%)でした(笑)

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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