沖縄の非正規雇用率の高さは「産業構造の違い」が原因ではない

こんにちは。築山です。

沖縄県の有効求人倍率が1.25倍となり過去最高を記録しました。24ヶ月連続で1.0倍を超えているそうです。同時に人手不足にも拍車がかかっており、築山がクライアント企業から相談を受ける頻度が増えましたし、馴染みの飲食店のSNSなどでもスタッフ募集の告知を毎日のように見ています。

しかし、記事にも書いてあるように、求人倍率は上がったとはいえ、全国平均との差は1.3倍、正社員の求人倍率では1.9倍もの差があります。求職者の希望は正規での雇用、求人会社の希望は非正規での雇用、この「ミスマッチ」が色濃く出ています。

沖縄企業や経営者の本音は「人は欲しいけど、人件費は抑えたいので非正規で雇いたい…」。沖縄県の非正規雇用率は43%で、全国平均の38%を上回る全国トップの比率(=正規雇用率は全国最下位)です。

この状況を説明する言葉としていつも使われるフレーズが「主だった製造業がなく宿泊・飲食業などのサービス産業に偏った産業構造」「雇用の調整弁としての非正規雇用」というものです。
経営コンサルタント屋として沖縄企業をお手伝いし、業績改善や労働生産性を上げてきた築山としては、以前から違和感のある言葉だったので、改めて数字で見ることにしました。

 

沖縄の非正規雇用率の高さは産業構造の違いが原因ではなく、ほとんどの産業で非正規雇用率が高いから

下のグラフは、沖縄県の産業別就業人口の構成比を全国平均のそれと比較したものです。実は、最も際立っているのは公務員です。就業人口は宿泊・飲食業と同規模で、その構成比は何と全国平均の1.8倍もあります。沖縄は『公務員の島』なんですね。

ちなみに、公務員は沖縄県で人気ダントツNo.1の職種です。試験倍率は全国1位で司法試験と同じくらい。「公務員になりたいが為に民間企業に腰掛け就職して試験勉強を続ける…」という言葉を初めて聞いた時には、驚きのあまりひっくり返りました。


次に、沖縄県の産業別非正規雇用率を全国平均のそれと比較してみます。下のグラフを見てもらえれば分かると思いますが、沖縄県の非正規雇用率は四業種を除いてすべて全国平均以上です

むしろ、就業人口構成の高かった宿泊・飲食業、医療・福祉業などの非正規雇用率は、それぞれ全国平均以下と全国平均並みです。逆に就業人口構成の高かった公務員の非正規雇用率は全国の1.6倍で三番目に高く、最も非正規雇用率の高い情報通信業にいたっては全国平均の2倍もあります。

もうお分かりだと思いますが、沖縄の非正規雇用率が高いのは産業構造が原因なのではなく、ほとんどの産業において非正規雇用率が高いからなんですね。

確認するために、沖縄の就業人口構成を全国平均に修正してから就業人口計に占める非正規雇用率をシミュレートしてみましたが、非正規雇用率はたった0.2%しか下がりませんでした。

 

非正規雇用を増やしても人件費は抑えられず、逆に労働生産性が下がる

さらに、非正規雇用率と売上高人件費率との、それぞれの伸びの相関関係を調べてみると、非正規雇用率を伸ばした業種ほど売上高人件費率が上がっています。
つまり、人件費の増加を抑えつつ、人手不足を解消しようとして非正規雇用を増やしたにも関わらず人件費は増加した…という皮肉な結果になっているのです。

そして、正規雇用よりも業務範囲や責任に制限があり、定着率の低い(流動性の高い)非正規雇用者が増えることによって労働生産性(付加価値売上 ÷ 従業員数)も下がっています。当然ながら、全国で最も非正規雇用率の高い沖縄県は、労働生産売上も全国ワーストです。

 

人手不足解消のコンサルティング

これまで、築山がコンサルしてきたクライアント企業で、人手不足に悩んでいる現場に入った時の状況は大抵、このパターンに陥っていました。

人が足りない ⇒ 新規採用する ⇒ 業務が滞る+教える時間の確保 ⇒  既存社員に負荷がかかる+新人がいたたまれない ⇒ 既存社員が辞める(新人も辞める) ⇒ 人が足りない ⇒ 新規採用する … 以下繰り返し

募集をかけて人が集まってくれば、まだマシな方です。上記を繰り返していると、いずれ人も集まらなくなってきます。これは、雇用側が気にしている、雇用形態、給与(時給)、待遇、などといった項目が、被雇用者が「本当に気にしているポイント」とズレているからです。

人手不足を本当に解消したいのであれば、人を雇う以前に、労働環境を整えて、既存社員の生産性を上げることが必要です。そして、そのカギを握るのが、それを実行する管理職・マネージャーの存在です。彼等の成長なくして人手不足の解消や労働生産性の向上はあり得ません。ご相談を受けたとき、築山が行うコンサルティングの主な内容はココになります。


現在の人手不足は、景気要因よりも生産年齢人口の減少によって加速しています。そして、生産年齢人口は、この先増えることはありません(移民を受け入れれば別ですが)。つまり、人手不足はこの先ずっと沖縄に付いてまわる課題なのです。

 

誤解して欲しくないのは、築山自身は非正規雇用を否定していない…ということです。しかし、非正規雇用というものは、ライフスタイルやライフステージによって被雇用者が主体的に選択するべき形態であり、雇用側が「雇用の調整弁」や「人件費を抑える手段」として選択すべきものではないと思っていますそして、人手不足解消の手段としての安易な非正規雇用増は、仮に短期的な解決に繋がったとしても、中期的に見れば会社衰退のリスクであることは、上記のいろんな数字が示している通りなのです

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

コンサルティングのご相談、お問い合わせは…

ご相談、お問い合わせ