ひどいパワーポイントを世界からなくす本

こんにちは。築山です。

職業柄、パワーポイント(今は「keynote」を使ってます)で資料を作成してプレゼンする機会が多くあります。このブログに掲載している分析資料もほとんどそうですが、サラリーマン時代から通算すると1万枚以上のスライドは作成していると思います(数えたら、先月は104枚でした)。

経営コンサル屋としての築山が提供するサービスは、マーケティング分析や課題解決の考え方、財務上の成果や社員の方々の生産性向上という無形物ですが、そのための意思決定や行動をして貰うために行うのはプレゼンであり、そこで使用する資料という有形物はとても大切な商売道具です。

その商売道具を、さらに磨き上げて切れ味鋭くするために、とても役立つ本を読みました。


筆者はGoogle社在籍時に「データビジュアライゼーション」という概念を確立した人です。「データビジュアライゼーション」とは、データを情報に変え、その本質を見抜き、アクションへと導く手法のことです。現在は独立して「ひどいパワーポイントを世界からなくす」というミッションを掲げて世界中の企業やNPOで活躍しています。

このブログを読んでくださる方には、築山と同じように、パワーポイントで資料を作成したり、それを使ってプレゼンをする機会の多いビジネスパーソンも多くいらっしゃいます。そんな方々にとって役立つ情報満載なこの本を、築山自身の備忘録も兼ねてシェアします。

ひどい資料が「ひどい原因」

みなさんは、見た瞬間「オエッ!」と吐きそうになるような資料に出会った経験はありませんか?この本を読んで分かったのは「ひどい資料は、人間の脳の動きに負担をかける要素や構成に溢れている」ということです。この「オエッ!」は脳に過剰な負荷がかかったときの状態なんです。最近、こういった資料は「ダサポ」や「お役所的ポンチ絵」という言葉で揶揄されているそうです。

・読みづらい ⇒ 要素が多い
・目がチカチカする ⇒ 色数が多い
・見ていて疲れる ⇒ グラフの解読に時間がかかる

・何が言いたいのかわからない ⇒ 流れがおかしい

 

データビジュアライゼーションのポイント

プレゼンとその資料の目的は「相手に何らかの意思決定や行動をしてもらうこと」です。この本では、そのポイントが順序立てて説明されています。

1. コンテキスト(文脈・ストーリー)を理解する

・誰に、何を、どのように伝えるのかを明確にする
・全ての相手に伝えようとすると誰にも伝わらない曖昧な資料になる
・資料の結論を1段落や1文で説明できるまで研ぎ澄ます
・そのために「3分ストーリー」「ビッグアイディア」「ストーリーボード」等の方法を活用

2. 効果的な表現を選択する

・12種のグラフが持つそれぞれの特徴を理解し適切なグラフを選択する
・棒グラフの起点は必ずゼロにする(倫理的な問題)
・円グラフ、2軸グラフは使わない、3Dグラフは絶対に使わない(認知負荷大)

3. 不必要な要素を取り除く

・相手の認知負荷を極力取り除き、相手の視線をスムーズに導く
・視覚認知に関する『ゲシュタルトの法則』を理解する(近接・類似・囲み・併合・連続性・接続)
・整列と余白の重要性を理解する

4. 相手の注意を引きつける

・人間は目でなく脳でものを見る(無意識的視覚情報を知る)
・色の使用数は控えめにしてトーンは抑える、サイズを有効に使う
・要素の配列を自然に(人の視線はZ型に動く)

5. デザイナーのように考える

・アフォーダンス、アクセシビリティ、審美性
・上記のポイントを駆使して、解読させるのではなく理解させる

6. ストーリーを伝える

・三部構成(始まり、中間、結末)を意識する
・繰り返しのパワーを活用する
・明確さの確認:水平ロジック、垂直ロジック、逆ストーリーボード

 

効率の良い資料作成は残業をなくす

上述6つのポイントは、良い資料を作るだけでなく、それを効率良く作るための手順でもあります。例えば、1の工程をおざなりにするとその後のすべての工程が無駄になり、時間のかかる非効率な作業になってしまいます。
残業が減らない要因として「非効率な会議や資料作成」を挙げる人は、全要因中1位で3割以上に達するというアンケート結果もあります。こういった状況が原因の一つとなって、最近では「パワーポイントの資料作成禁止」という会社もあるぐらいです。


これは、パワーポイントが悪いのではなく、時間だけかけられた「ひどいパワーポイント」の資料が会議での迅速で適正な意思決定にマイナス影響を与えていることに他ならないと思います。
矛盾するようですが、極論を言えば「良い資料は、資料化しなくても相手の意思決定や行動を引き出す」のです。上記6つのポイントの1と6を正しく実施すればメモ一枚と数分の話で終了します。


 

本には書かれていない、データビジュアライゼーションのジレンマ

これは、本には書かれていないことなんですが、資料作成とプレゼンを日常的に行っている築山としては、これまでの自分の経験から、あるジレンマを抱えています。それは「あまりにスパッと伝わるが故に、受け手によってはそれ以上の思考を止めてしまうリスクがある」ことです。

これに関しては、相手のタイプ(論理的か、感覚的か)や状況をしっかり考えた上で、意識して資料作成とプレゼンをやっていくしかないと思っています。その1点を除けば、データビジュアライゼーションは、より生産的な仕事が出来るようになることは間違いないスキルです。築山はこの本を読んで「ひどいパワーポイントをこの世界変からなくす」運動に参加することに決めました(笑)。

皆さんも、この本を読んで実践と訓練をやってみてください。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

コンサルティングのご相談、お問い合わせは…

ご相談、お問い合わせ