こんにちは。築山です。
コロナ危機による経済や雇用情勢の変化を受けてなのか、独立起業について、弊社の創業計画書を公開した2年前の有料ブログが最近になって再び売れ始めています。
この創業計画書の根幹を成しているのが「ランチェスター理論」です。これは、起業やビジネスにおける弱者や後発が、市場で生き残るために採るべき戦略の原理原則の一つですが、これをさらに押し進めた究極論を述べているのがピーター・ティールです。
彼は、世界最大のオンライン決済会社PayPalの共同創業者であり、創業間もないFacebook社に投資して200倍のリターンを得た投資家であり、リベラル派の多いシリコンバレーの住人にも関わらずトランプ大統領の経済顧問を務めたことのあるリバタリアン(新自由主義者)です。
ちなみに、PayPalの初期メンバーには、TESLAのイーロン・マスク、YouTubeのスティーヴ・チェンやチャド・ハーリー、yelpのジェレミー・ストップルマン、LinkedInのリード・ホフマンなどがおり、世界に名を馳せる会社を起業した彼等は「ペイパル・マフィア」と呼ばれています。ピーター・ティールはその中心的人物でもあります。
ピーター・ティールによる「独占のすすめ」
ランチェスター理論が「競合との競争に勝つための戦略」であるとするならば、ピーター・ティールの説く戦略は「独占利益を得るために競争そのものを避けよ」というものです。
彼は自著『ゼロ・トゥ・ワン』の中でこう語っています。一般的に資本主義の源泉とされる完全競争の行き着く先は利益の消滅であり本来の目的である資本の蓄積が出来ないこと、企業活動の本質は資本を蓄積することで永続的な価値を創造して社会を良くすることであり、そのためには独占状態が必要である…と。
彼の言う「独占企業」とは、不正にライバルを蹴落としたり、国から既得権益を得ているような企業ではなく「他社との替えがきかないほど、そのビジネスに優れた企業」のことです。企業活動で得た利益を他社との競争ではなく新たな価値創造のために無駄なく使えること「競争とは無縁」という意味での独占です。
金のための仕事をしないために稼ぐ
ピーター・ティールの説く「替えのきかない存在になる」ことは、起業する上でとても重要です。他社でも出来ること、他社と僅かな差しかない価値を提供するようなビジネスは、いずれ買い叩かれます。
買い叩かれると、会社を存続させるためのビジネス、つまり「金のための仕事」をやることが主となってしまい、新たな価値を生み出すことが難しくなります。新たな価値を生み出すためには金の心配をする必要のない余裕が必要です。
言い換えれば、生産性の高い仕事をすることです。独自性や突出性ある価値を生み出し、それを理解し、相応しい対価を払ってくれる相手を顧客としてビジネスをすることです。
経営者として、経営コンサル屋として、このコロナ危機の中で強く感じるのは『金のための仕事をしないために金を稼ぐ』ことの大切さです。金や生活のために、自分の大切な時間や健康を犠牲にしたり危険に晒さないために、どんな人と、どうやって、どこまで稼ぐのか?また、金や生活のために自分の意見発信や行動を控える人が増えると、議論や改革が停滞し社会にとっても損失となります。こうして、金のための仕事によって人や社会は蝕まれていくのです。
彼が『ゼロ・トゥ・ワン』の中で再三にわたって問いかける『賛成する人のほとんど居ない、大切な真実とは何か?』。賛成する人が居ないと言うことは競争がないこと、大切な真実とはそれが多くの人にとって重要であること。それを見つけるためには、素朴な疑問と健全な猜疑心を持って社会や市場を見ることが必要です。起業を考えるということは、自分や会社の「在り方」を考えることなのです。
築山 大
琉球経営コンサルティング