イノベーションの本質と沖縄製造業の未来

こんにちは。築山です。

株式会社沖縄銀行様の100%子会社である株式会社みらいおきなわ様が受託した『沖縄県バイオ関連企業経営支援事業』に経営アドバイザーとして参画することになりました。

全国ワーストの県民所得を上げるために大切な要素となる労働生産性(稼ぐ力)の増強。特に、他地域と比べて小規模な製造業は、小さな島であるが故に、資本集約型ではなく知識集約型の産業集積を目指すべきです。その意味で、儲かる(稼げる)だけでなく、社会課題の解決や沖縄の自然環境保護にも貢献し得るバイオ産業を経営戦略面からお手伝いすることは、弊社としてやるべき仕事だと考えます。

 

イノベーションの本質

イノベーションの本質は、技術や発明そのものではなく、その結果として社会や市場が刷新されることです。産業革命が、蒸気機関の発明ではなくその数十年後に製造や移動手段に実装されてはじめて本格化した歴史がそれを物語っています。そのためには、社会や市場のニーズを見極めて技術や発明に結びつける力、つまりマーケティング力が必要です。

バイオ産業やIT産業などでは、このマーケティング力はさらに重要になります。技術や発明を競う市場では、従来のようなシェア争いではなく、技術や発明が陳腐化し短期間で市場そのものがリプレイスされるような争いになります。例えば、コダックは富士フィルムに負けて倒産したのではなく、スマートフォンの登場によってフィルムカメラ市場ごと吹っ飛ばされたのです(2012年)。

その視点から考えると、マーケットイン vs プロダクトアウト の議論もある意味で不毛です。マーケティング力を備えていなければ、どちらのアプローチも失敗します。マーケットイン派は、顧客の言うことを聞きすぎて、誰からも嫌われない代わりに誰も熱狂させられない凡庸な商品やサービスを生み出し、プロダクトアウト派は、独善的な視点や内輪の基準によって分かりづらい商品やサービスを生み出し、セールスのメンバーを困惑・疲弊させるでしょう。

いかに技術や発明があろうとも、勝負する市場の選択やタイミングを間違えると事業の成功は難しくなります。弊社は、沖縄企業の事業成長戦略とその実行、新規事業立ち上げなどの実績を積んできた戦略系コンサルティング会社として、沖縄のバイオ企業のマーケティング力を高めるお手伝いをします。

 

沖縄製造業の未来

沖縄の労働生産性は全国平均の6割程度しかなく、その原因の一つとしては、上述のように製造業の割合が5分の1しかないことが挙げられます(正確に言うと、沖縄の労働生産性はほぼ全ての産業において全国平均以下なのですが)。

しかも、沖縄の製造業の内訳を見ると、食品・飲料とその他製造業で全体の65%を占め、電子機器・一般機械・輸送機械といった労働生産売上の高い製造業が殆ど存在していません。しかし、こうした資本集約型の製造業を誘致・集積することは小さな島である沖縄にとって現実的ではありません。

国土面積が沖縄より7割も小さいシンガポールの第2次産業の割合は沖縄の1.7倍もあります。世界で最も企業価値の高い企業は、製造業であるアップルコンピュータですが、その工場は米国にはありません。世界で最も企業価値の高いアパレル製造業はナイキですが、この会社は基本的にデザイン部門とマーケティング部門だけで成り立っています。ちなみに、アップルの営業利益率は30%、ナイキは12%、日本の製造業の平均は4%です。

これらの事実が示しているのは、これからの製造業は資本集約型ではなく知識集約型になっていくと言うことです。その意味でバイオ産業は、沖縄の製造業や労働生産性を上げるうえで重要な存在となると思います。

ただし、県外からバイオ企業や工場を誘致するだけでは、安価な労働力や税制優遇を提供するだけの所得が域内循環しない産業になってしまい、過去の情報通信産業での失敗を繰り返すだけです。大切なのは、マーケティング力を実装した技術や発明で、出来るだけバイオ産業の川上部分を押さえることや、全てを自社の技術や発明だけでやるのではなく、他社の技術や製品とマッシュアップさせてスピード感をもってエコシステムそのもを作り上げることです。その部分では、株式会社みらいおきなわ様による幅広い銀行系のネットワークが力になると思います。

このように、沖縄のバイオ産業の経営戦略を、弊社と株式会社みらいおきなわ様でマーケティング、マッチング、知財戦略、結果としての人材育成の側面からお手伝いしていきます。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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