これからの沖縄県産品マーケティングのあり方 〜弊社コンサル事例〜

こんにちは。築山です。

経営アドバイザーとして参画している沖縄県バイオ関連企業経営支援事業にて、マーケティングのお手伝いをしてきた運動機能補助サプリ『Le Q’om』(レキオム)が発売されました。このサプリメントは、沖縄在来の山芋である「クーガ芋」(和名:トゲドコロ)の機能性に着目し、株式会社沖縄テレビ開発様が、立命館大学と生産者との産学農地域連携で研究開発したものです。

 

山芋に含まれる機能性成分ジオスゲニンは、性ホルモンの前駆体であるDHEAと類似した化学構造を持ち、骨格筋の形態や機能の維持など生体にとって様々な役割を担っています。「クーガ芋」は、国内産の他山芋類と比較してこのジオスゲニンが最も含有されている品種であり、沖縄が栽培の北限となっています。

 

「沖縄らしさ」だけでは売れない時代

しかし、『Le Q’om』(レキオム)の販売戦略を考えるのに先立ってクライアントと決めたことは、安易に「沖縄らしさ」だけで売らない…ということでした。

今や、沖縄を訪れる観光客の約9割がリピーターで、4人に1人は10回以上のヘヴィユーザーです。安価で沖縄へ行け、気軽に沖縄の情報にアクセスでき、沖縄県民より沖縄に詳しい人もいる現在、表層的な「沖縄らしさ」だけでは売れなくなっています。実際、東京で行った沖縄県産品に関するアンケートでは、若い世代ほどそれが顕著で、沖縄県産であることよりも商品本来の品質を重視することが分かっています。

 

サプリメント・健康食品市場の拡大とその弊害

また、サプリメントを含む健康食品の市場額は約1.2兆円と巨大で、コロナ禍を経てさらに拡大傾向にありますが、特定保健用食品や機能性表示食品といったものから、科学的根拠の怪しい商品も多いが故に消費者からのイメージも悪く、ある調査では「行き過ぎた宣伝が目立つ」と答えた人が半数以上を占め、東京都から改善指導を受けたインターネットの不当表示でも健康食品は断トツの首位です。

さらに、科学的根拠について国が製品を個別審査・認定する特定保健用食品とは異なり製造メーカー自らの責任で機能性を表示できる機能性表示食品では、市場の急拡大&競争激化の弊害として、科学的な質の低い研究論文の乱発も問題となっています。

 

マーケティング:何よりも品質が優先され、その要因として地域性がある

こうした市場状況や消費者認識を踏まえて、マーケティング戦略の骨子は次の三点になりました。

① 独善的ではなく客観的指標に裏付けられた品質訴求をする

このLe Q’om』(レキオム)は、機能性成分であるジオスゲニンの筋質改善効果に着目し、アスリートをはじめ、フィットネストレーナーや理学療法士などのヘルスケア事業者の協力を得て、大学において数年かけて科学的エビデンスを積み上げながら研究開発されました。

また、原材料には沖縄県産の無農薬栽培の「クーガ芋」を使い、有意量のジオスゲニン吸収のリスクとなる糖質の過剰摂取を回避するため、特許製法による糖質除去を実現しています。さらにこのサプリメントは、沖縄で初めて世界アンチドーピング機構に基づく英国の認証プログラム『Infomed Sports』を取得し、厳しい品質&安全基準もクリアしています。

② その品質の要因が沖縄県産である

冒頭でも述べたように、「クーガ芋」は沖縄在来の山芋です。かつての沖縄の健康長寿を支えた琉球料理には、その根底に医食同源の思想が流れており、今から190年前に記された『御膳本草』という琉球料理本にも、滋養・健康食材として「クーガ芋」の効能に関する記述があります。

その意味で、このLe Q’om』(レキオム)は、長い歴史と固有の食文化に根ざした、とても沖縄らしいサプリメントです。

③ 差別化:勝てる市場を選ぶ

ジオスゲニン配合の山芋系サプリメントは、既に多数発売されていますが、それらのヘルスクレーム(効能)は、滋養強壮や老化予防(ロコモティブシンドロームや認知症)です。上述のように、このサプリメントは筋質改善を補助する運動系サプリメントですから、そうした先行販売商品とはカテゴリが異なります。

また、その開発経緯からヘルスケア事業者からの注目を浴びており、量販店での販売よりも効能や商品価値を理解する彼等による対面販売を想定しています。加えて、日常的にジムやフィットネスクラブを利用する健康意識の高い顧客は高所得者層が多く、商品の価値を理解すれば高額でも抵抗なく購入してもらえます。そうした仮定の元、昨年よりモニタリングを行いフィードバックを得る準備も進めています。

 

何よりも大切なのは、科学的根拠と客観的指標に裏付けられた高い品質であり、その要因として地域性があること。そして、広げて売るのではなく、品質や価値を理解できる客層に絞り込んで売ることです。実際、6月6日の記者発表直後からサイトで売れているそうです。魅力ある商品としては勿論ですが、これからの沖縄県産品マーケティングのあり方を示す商品としても期待しています。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

コンサルティングのご相談、お問い合わせは…

ご相談、お問い合わせ