コンサルタントが「胡散臭い」と言われる理由

こんにちは。築山です。

今日、行きつけの美容院で髪を切ってもらいながら店主(30代男性)から聞かせて頂いた話が、ごく控えめに言っても「酷い話」だったので堪らず筆をとります(=キーボードを叩きます)。

店主:築山さんのお仕事ってコンサルタントですよね?
築山:そうです。経営コンサルタントです。
店主:他のお客さんで個人でコンサルタントをやってる方がいて、先日「私のセミナーに来なさい」と強く勧誘されたんですよ。お客さんだから無下に断るのも感じ悪いと思って返事は保留してるんですけど、同じコンサルタントの築山さんにちょっと相談してから返事しようと思って。
築山:どんな内容のセミナーですか?
店主:「売上を上げるために経営者の鉄則をみっちり教える」…みたいな。◯月◯日の土曜に◯◯◯ホテルの会議室を貸し切りでみっちり1日
築山:そうですか。料金はいくらなんですか?
店主:確か、29万円って言ってました。私は個人経営者なので安くしてもらっての値段だそうです。
築山:(長い沈黙)…えっと…1日ですよね?
店主:はい。1日です。
築山:セミナーと銘打ってるのでマンツーマンじゃないですよね?
店主:はい。他にも経営者が来るみたいですよ。
築山:そのセミナー参加の1日の他に、このお店に来て店主の話を聞くとか、具体的な指導をしてくださる、みたいなフォローとかは付かないんですか?
店主:はい。その1日だけです。
築山:そのセミナーのゴールとか、目標みたいなものなどの具体的な説明はありましたか?
店主:いいえ。言ってませんでした。
築山:そうですか。土曜ですよね?もし参加するとしたら、繁忙日にこのお店を閉めて行かなきゃいけないですよね?
店主:はい。それをその方に話したら「将来の売上を上げるための話なんだから店を閉めてでも参加しなさい、私が命を懸けて説明するからみたいなこと言ってました。
築山:……(絶句)

 

「コンサルタント」って何だ?

そもそも築山は同業者のビジネスを批判するのは嫌いですし、そんな時間があったら顧客と自分のために使います。しかし、今回はいつもお世話になっている店主の当惑した顔を見て、さすがにスルー出来ませんでした。
コンサルタントの定義や業務範囲は曖昧で、(一部の分野を除けば)特に資格も必要ないので自ら名乗れば誰でもコンサルタントになれます。強いて言えば、下記定義のように「経験と知識」を持っていること「指導や助言」を適切に行えることでしょうか。

コンサルタント
ある分野についての経験や知識をもち、顧客の相談にのって、指導や助言を行う専門家のこと
三省堂 大辞林 より

しかし、この定義を純粋に解釈するなら、サラリーマンであろうが、個人事業主であろうが、業種に関わらず、顧客接点のある人はすべからくコンサルタントでなければならない…と築山は思います。

顧客接点で働く人たちにとって重要な能力はマーケティングセンスです。平たく言うと「誰の、どんな困りごとに対して、何を、いくらで、どうやって売るのか」を瞬時に正しく把握し実行する能力です。

 

そのコンサルタントは「胡散臭い」というよりも、そもそも「マーケティングがなってない」という問題

件のコンサルタントに関していえば「経営者の、売上が上がらないという困りごとに対して、心構え的なものを、29万円で、彼らを一堂に集め1日かけて一方通行的に話す」というコンサルティングサービスを提供したいのでしょう。結論から言うと「彼は、この店主が必要としていないサービスを押し売りした」ことになります。ちなみに、店主が名前を教えてくれたのですが、築山は存じ上げない方でした。宜野湾の美容院で定期的に髪を切っているのだから沖縄在住の方でしょう。創業前に徹底的に沖縄のコンサル業界を調査したつもりですが、まだ勉強不足なのかもしれません。

1. 提供サービスが顧客に伝わっていない

まず、店主に「売上を上げるための経営者の鉄則を教えるみたいな…」と言わせてしまっていることが問題です。自社のサービス内容や目的が漠然としか伝わってない証拠です。自分が提供するサービスを購入するか否かは顧客が決めることです。セミナーに参加することで、何を得て、その後どんなメリットがあるのかを一瞬で伝えなければダメです。

2. ターゲットを間違っている

次に、忙しい1日を割いて一方的な話を聞く余裕があるのは、一定の売上や規模のある大きな会社の経営者ぐらいです。29万円という価格がその証拠です。これは、一般的な会社の経費を遥かに超えた金額です(ちなみに、日本企業の社員一人あたりの教育訓練費平均は1,080円)。もちろん、個人負担で受けるにも高い金額です。この美容院は繁盛していますが、そこまでの費用捻出は難しいと店主もおっしゃっていました。

3. 顧客の業界事情が見えていない

そして、これが一番ダメなところですが、美容院というサービス業は土日が繁忙日です。提供サービスの曖昧なセミナーに、その貴重な営業日を潰して、29万円というその店にとって捻出の難しい金額を払って「将来の売上を上げる話だから、店を閉めてでも参加すべき」と言うのは無茶苦茶です。29万円の利益を上げるために何人の髪を切らなきゃいけないのか?そのために何日営業しなきゃいけないのか?それが分かっていれば決して口に出来ない営業トークです。さらに言うなら、自分の資産を担保に銀行からお金を借りたり、従業員の生活を預かるプレッシャーに毎日晒されている経営者の方に、軽々しく「命を賭けて説明する」という言葉は使うものではありません。

これはもう、世間でよく言われる「胡散臭いコンサルタント」を通り越して「マーケティングがなってない失礼なコンサルタント」のレベルです。正直、この方のセミナーで話される内容を聞いても売上が上がる気はしませんでした。
そのことを店主に「個人的な意見」として伝えたところ、彼の顔がパッと明るくなり「お断りの返事を入れておきます。でもすっきりしました!」と。
もしかしたらこの先、美容院の顧客が一人減ることになるかもしれませんので、築山の知人を紹介しておきました。

 

プロセス・コンサルティング > コンテンツコンサルティング

件のコンサルタントのサービスは、単に知識や情報を提供するコンテンツ・コンサルティングに分類されます。しかし、それらはインターネットやビジネス書で簡単に入手出来る世の中です。目まぐるしく変化するビジネスの世界において、そういった知識や情報は知っていて当たり前で、それを組織が理解し、実行と継続を通じて成果に繋げられるよう、現場と一緒にやれるための力量や経験値がコンサルタントには必要とされています。つまり、コンテンツ・コンサルティングの時代からプロセス・コンサルティングの時代へと変わったのです


築山がクライアント企業の方と初回面談をした後に「コンサルタントは胡散臭いと思ってたけど、違って安心した」とよく言われます。その理由を尋ねると、皆さんが思い描いている、若しくは、過去に苦い経験をした殆どが、コンテンツ・コンサルティングを提供するコンサルタントなんですね。しかも、そういったコンサルタントのプロフィール写真は、きまって「ネイビースーツ+派手チーフ+腕組み+ドヤ顔」なんだそうです…。分かるような(笑)
ちなみに、コンテンツ・コンサルティングがウン万円で提供しているような内容であれば、築山のnoteで200円から販売してます。

まさに「悪貨は良貨を駆逐する」世界なのがコンサル業界。このブログを読んでくださる方々が「悪貨」に騙されないために、この二冊をお勧めします。

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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