問題なのは、売れないことよりも、売れない理由を客観視できないこと

こんにちは。築山です。

世の中では、把握出来ないくらい沢山の商品やサービスが発売されますが、その多くは消えていきます。例えば、コンビニの品揃え数は約2,500〜3,000種類、商品の入れ替えは毎週100種類以上と言われているので、一部の定番&売れ筋を除くと発売された商品は半年から1年以内に消えていくことになります。コンビニほど極端な業界ではないにしろ、我々はこうした栄枯盛衰の激しい市場に対して新規商品やサービスを投入すべくマーケティングを行うわけです。

 

マーケティングの前にやるべきことが沢山ある

新規商品やサービスのマーケティング依頼を受けてコンサルティングをするとき、まずクライアント理解してもらうのがマーケティングプロセスです。マーケティングプロセスとは、商品やサービスの①市場環境分析と②細分化(セグメント)からはじまり、③ターゲットとする客層を設定し(ターゲティング)、④その客層に訴求する自社商品・サービスの顧客価値や他社と比較した優位性を定義し(ポジショニング)、⑤それらを具体的に商品や販売&宣伝方法に反映させ(マーケティング)、⑥評価と修正しながら目標達成に向けて継続的に実行する、という6段階の過程(=プロセス)のことです。

こうしてみると、具体的なマーケティング(⑤)の前には、①〜④のやるべきことが沢山あることが分かります。新規商品やサービスが思うように売れない場合は、①〜④が曖昧なまま⑤をやったり、最悪の場合、①〜④を素っ飛ばしていきなり⑤から始めていることに原因があったりします。

 

問題なのは、売れないことよりも、売れない理由を客観視できないこと

以前、売上減少に歯止めの効かない沖縄県産品の再興計画を依頼され、市場分析(①)で製品ライフサイクルの「衰退期」というビジネス用語を使っただけなのに、県庁の偉い人に怒られたことがあります。

また、沖縄県産食料品の海外輸出に関しては、関税が存在しないという理由などから香港にリソースの多くを割いていますが、当然ながら日本の他地域も同様のことを考えます。輸出額の70%を香港に頼っているにも関わらず、香港から見た市場シェアは僅か0.75%にとどまっているのは、セグメンテーションやターゲティング(②③)の甘さが容易に想像できます。

さらに、ある沖縄企業は、数年かけて獲得した認証を商品の差別化要素としてアピールしたいと言ってきましたが、既に殆どの競合商品がその認証を持っているため売上が伸びすに苦戦していて、これはポジショニング(④)のプロセスを完全に素っ飛ばした結果と言えます。

作り手がいいと思うものを作ることを「プロダクトアウト」と言いますが、独善的にそう思っているだけでは「プロダクトアウト」以前の話です。売れる/売れないは結果でしかありません。問題なのは、売れないことよりも、売れない理由を客観視できないことなのです。こうした企業や自治体は、心ない広告代理店やコンサルティング会社(弊社を除く)に、言われるがままにマーケティングやプロモーション(⑤⑥)にお金を払ってくれるカモとして見られます。

 

そんなものなくていいだろう…

こうした、自分を客観視することの大切さを、「PayPal」創業者であるピーター・ティールは自著『ゼロ・トゥ・ワン』で分かりやすい例え話を使って教えてくれます。少し長くなりますが、以下に引用します。

非独占企業は反対の嘘をつくー「この市場には自分たちしかいない」と。起業家はたいてい競争範囲を甘く見積もりがちで、スタートアップにとってはそれが命取りになる。彼らは自分の市場を極端に狭く限定し、まるで自分たちが市場を支配しているかのように考えたがる。

たとえば、パロアルト(シリコンバレーにある都市)でイギリス料理のレストランを開店したとしよう。「誰もやってないから」というもっともな理由からだ。これなら市場を「独占」できる。ただし、それは市場がイギリス料理に限定されるならという話だ。実際の市場はパロアルトのレストランすべてだとしたら?パロアルトだけでなく近郊のレストランもすべて入るとしたらどうだろう?

こうした質問に答えるのは難しい。でも、こうした問いを発しないとしたらもっと問題だ。新しいレストランのほとんどが一、二年以内に潰れると聞けば、オーナーはまず、自分のレストランだけは違う理由を見つけようとする。自分だけは特別だと周囲に納得させることに時間を使い、それが事実かどうかを真剣に考えようとしない。だけど、一旦立ち止まって、世界中のどんな料理よりもイギリス料理が好きな人が、本当にパロアルトにいるのかを考えてみるべきだ。いないという可能性だって十分あるのだから。

(中略)

クリエイティブ業界にも同じことが言える。自分の作品を古い映画の焼き直しだと認める脚本家はいない。「様々なエキサイティングな要素をまったく新しい形で組み合わせた映画」として売り込むはずだ。しかもそれは本当かもしれない。たとえば、『サイバーネット』と『ジョーズ』を足して二で割ったものにジェイ・Zが出演するとしよう。エリートのハッカー集団にラップスターが加わって、友だちを殺したサメを捕まえる映画だ。確かにこれまでにないものになる。ただ、パロアルトにイギリス料理店がなくてもいいように、そんな映画もなくていいだろう。

 

マーケティングとは「そう思うのは自分たちだけではないか?」と疑ってみる科学的手法

個人レベルでは、社会や人間関係の中での自分の個性や役割、他人からの見え方などを気にする謙虚な人たちなのに、いざ集まって商品やサービス開発をする段になると、なぜ独善的な判断をしがちになるのか?不思議です。マーケティングプロセスは「そう思うのは自分たちだけではないか?」と疑ってみることで、商品やサービスが売れるための可能性をより高めるための科学的手法です。弊社のマーケティング・コンサルティングはこの工程を伴走支援します。必要とされる方はご相談ください。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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