こんにちは。築山です。
今回は沖縄の労働生産性について、備忘録も兼ねた4つのファクト(分析データ)を列挙しておきます。労働生産性とは、簡単に言うと「投入した労働量(時間・人数)が生み出した付加価値売上(粗利益)」です。つまり、所得が低い原因も、長時間労働が無くならない原因も、正規雇用が増えない原因も、全ては労働生産性が低いことに起因しているのです。
1. 沖縄の労働生産性は全国最下位である
沖縄の労働生産売上は349万円で全国最下位。1位の東京都(686万円)の約半分。全国平均(508万円)の約7割しかありません。これはそのまま県民所得の差と同じです。つまり沖縄県民の所得が低いのは労働生産性が低いからに他なりません。
2. 沖縄の労働生産性が低い原因は「産業構造」よりも、殆どの業種で労働生産性が低いからであり、本来は労働生産売上が高いはずの業種ほど低いからである
・ 実は、宿泊・飲食業やサービス業の労働生産性は全国平均並み
・ むしろ、それ以外の産業の労働生産性が全国平均より低い
・ しかも、本来は労働生産性が高いはずの産業ほど全国平均と乖離
沖縄の労働生産性の低さの要因としてよく持ち出される「宿泊・飲食業やサービス業の比率の高い産業構造」という「話法」が間違っていることがこのグラフを見れば明らかですね。
ちなみに、産業構造を全国平均に合わせて沖縄の労働生産性をシミュレートしてみましたが、労働生産性は約5.5%しか上がらず全国最下位は変わらなかったことを付け加えておきます。
3. 全国と平均と比べて 労働生産売上が高い業種ほど成長していない
沖縄は、本来労働生産売上が高いはずの業種ほど全国平均より低く、しかもそれらの業種ほど成長していませんから労働生産性が上がるはずがありません。
特に、観光業に次ぐ中核産業と位置付けられ、行政による「積極的な県外企業の誘致」がなされてきた情報通信業(IT産業)ですが、その実態はソフトウェア開発の下請けやコールセンター業務などです。結果として、沖縄の情報通信業は全国平均の約半分の労働生産性と7割程度の成長しかない産業になってしまいました。
4. 雇用の調整弁として非正規を増やし、それが更なる生産性の低下を招いている
沖縄は「労働者の正規雇用率」も全国最下位です。言いかえれば、非正規雇用率が全国で一番高い地域ということです。財務基盤が脆弱で個人&親族経営による中小企業が多く、昔から非正規雇用を「雇用の調整弁」として増やす向きがあったことが背景にあります。
一般的に非正規雇用率が高くなるほど労働生産性は低下しますから、非正規雇用を増やすほど労働生産性も低下するのは当然の結果です。
ここにきて人手不足とそれによる賃金の高騰が加わりました。昨年あたりから沖縄を代表する有名企業が「人件費の高騰」を理由として減益になっているのは象徴的です。
労働生産性も下がり利益も減る。利益を確保しようとして非正規雇用を増やすことでさらに労働生産性と利益が減る…。新聞やマスコミが語る「好調な沖縄経済」の裏側では、こうした負のループと消耗戦が進行しています。
生産性を向上させたコンサル事例に共通する3つのポイント
これまでのコンサルでの成功事例を振り返ると、生産性を向上させた企業に共通するポイントが3つあります。
①「自分軸」ではなく「他人軸」で自社を客観視した
②「対処療法」の繰り返しを止め、腰を据えて「抜本的改善」をした
③「現状維持」ではなく「変化」に対する補償をした(賃上げは生産性向上の対価)
情報通信業にしろ観光業にしろ、沖縄で好調な産業の多くは「付加価値の高さ」ではなく「安価でなこと」によって伸びています。最初から、労働生産性が低く消耗戦に陥るように自ら突っ込んでしまっているのです。
この状況をひっくり返す唯一の方法は、付加価値を上げるために他人軸で自分を客観視することです。つまり正しくマーケティングをすることです(①)。例えば、弊社ではクライアント企業様と一緒に付加価値を上げる様々な取り組みを行っています。
また、労働生産性が向上しないことの要因には、それが明らかに合理的ではないと分かっていても、それによって他人(例えば非正規雇用者)に犠牲を負わせていたとしても、それを変えることを回避したり先延ばしにする「現状維持への強い同調圧力と人間関係」があります。
上記の②と③は、こうした問題を乗り越えるために重要なポイントになります。対処療法の繰り返しによる先延ばしや膨大な無駄を止めるには地道なプロセス改善が必要ですし、目先の利益ではなく将来にわたって利益を出し続ける企業体質になるためには従業員への投資が不可欠です。
実際、弊社が行なったコンサルティングでは、新規で採用をしなくても既存社員の成長を通じて赤字から脱却し、労働生産売上を1.3倍にすることができました。
築山 大
琉球経営コンサルティング