沖縄の「稼ぐ力」を上げるために

こんにちは。築山です。

沖縄の貧困問題や脆弱な経済活動を改善するキーワードとして「稼ぐ力」という言葉が使われるようになりました。今や、沖縄の地元紙やマスメディアでこの言葉を見ない日がないくらいです。沖縄県も、今年度からの振興計画でこの言葉を用いて、全国ワーストの県民所得を現状の214万円から291万円まで引き上げることを掲げています

 

なぜ「稼ぐ力」を上げるのか?

所得を上げる。貧困問題を解決する。「稼ぐ力」を上げる目的が正しことには誰も異論ないと思いますが、単なる掛け声に終わらず本当に実現するためには、もう一歩踏み込んで各自が「自分事」として理解する必要があります。

なぜ「稼ぐ力」を上げるのか?それは、このままだと沖縄の経済活動は立ち行かなくなる可能性が大きいからです。

沖縄の主要産業の一つである観光業の経済波及効果は、コロナ以前の2017年度には11,699億円ありました。同年度の沖縄の県民総生産が44,157億円ですから、沖縄経済の26%は観光関連であると推計されます。これがコロナ禍によって大部分が消失しました。

また、沖縄の県民総生産の約4割は、建設、公務、教育、医療福祉で占められており、それぞれ全国平均より1.4〜2.1倍も高くなっています。こうした産業の特徴は公共性が高く政策と沖縄振興予算を含む補助金による財政依存型であることです。従前から沖縄は、財政依存型産業の割合が高いため付加価値を生み出して企業所得を上げる経済的合理性が作用しづらい地域でしたが、補助金の減額が決定したり、根拠となる法律の適用に5年以内の見直しが入るなど(以前は10年)今後の継続交付が不透明な事業もあります。

地域経済はそこに存在する企業間や産業間の相互影響と活動の循環によって成り立っています。沖縄経済は、観光関連産業と財政依存型産業で約7割。これが大幅に縮小するということは相当数の県民生活に影響が出るということであり、一刻も早く「稼ぐ力」を上げて過度な補助金依存体質から脱却し、自ら掲げる「強くてしなやかな自立経済の構築」を実現しなればならないのです。

 

「稼ぐ力」を上げるとはどういうことか?

県民所得は、①企業の経常利益などの企業所得、②労働力を提供した雇用者報酬、③地代や利子などの財産所得、の三つから構成されます。県民所得が上がる構造は、まず①が上がり、それが②に還元され、副産物として③が上がります。従って、県民所得を上げるために必要な「稼ぐ力」は以下であると定義できます。


① 企業所得を上げる

・企業が、商品やサービスの付加価値(収益力)を上げる
・企業が、それを実現するためのマーケティング力を実装する
・企業が、それを実現するための組織や体制を作る

② 雇用者報酬を上げる
・労働者が、提供する労働の質を上げつつ量を維持/減らす(生産性向上)
・労働者が、そのために必要な技術や知識を実装する
・企業が、労働者の生産性に応じて企業所得を還元する仕組みを作る

③ 財産所得を上げる
・企業や労働者が、得た所得を財産運用に回す
・企業や労働者が、自らの財産価値を増やす

 

沖縄の「稼ぐ力」を上げるために

1)順番を間違えない

上述のように、県民所得の向上は、①→②→③の順番で起こります。全国ワーストの正規雇用率である沖縄では「雇用の質を上げる」ことがよく言われますが、潤沢とは言えない企業所得を雇用者に回したところで長続きしません。これは、県民所得が正規雇用率ではなく労働生産売上と強い相関があることからも明らかです。従って、②→①という順番はあり得ず、①→②か、若しくは、①②を同時進行する必要があります。

 

2)付加価値の創造は市場評価と向き合う。独善的な視点や内輪の基準で考えない

企業が、商品やサービスの付加価値を上げて収益力を上げるためにはマーケティングを行う必要がありますが、収益力の低い企業に多く見られるのが、適切なマーケティングプロセスを行って市場評価に向き合うことなく、独善的な視点や内輪の基準で付加価値を定義したり戦略を立案していることです。

例えば、先日発表された那覇港の長期戦略には「アジアにおける地理的優位性」や「近隣する那覇空港との連携」を掲げていますが、残念ながら、世界の潮流や大局的視点が抜け落ちたものと言わざるを得ません。

過去8年間でアジアの国際貨物取扱高が1.5倍に増加しているのに対して日本と沖縄はほぼ変わらず、連携を模索する那覇空港の取扱高にいたっては約30%も減少しています(念のために言うと、これはコロナ前の話です)。船舶や航空機は燃費向上で中継地点の必要性が低下し、仮に利用するにしても小さな離島であるが故に膨大な国際貨物量をプールする用地もなく、今や「アジアにおける地理的優位性」は減少。そもそも海外競争力のある輸出品(県産品)が十分にありませんが、上記の長期構想にはこうした現実や市場変化の記載がありません。

従って、本来採るべき戦略は、港湾施設の拡充(公共工事)よりも輸出する県産品の付加価値向上や開発によって中身のある貿易競争力を積み上げていくことです。戦略のミスは戦術(=現場の努力)では取り返せません。独占的な視点や内輪の基準だけでお金や労力を「勝てない市場」に投入することこそ「稼ぐ力」を阻害する一番の要因です。

 

3)成功事例の「横展開」は意味を成さない

商品やサービスの付加価値を上げるために、適切なマーケティングプロセスを行って市場評価と向き合うことが重要ですが、その成功事例を「横展開」しても「稼ぐ力」は上がりません。

なぜならば、付加価値とは、市場、競合、自社の関係や局面から総合的に考えて自社が勝つために創られた独自性や突出性を持つものです。言い換えれば、その企業にしか出来ないワン・アンド・オンリーなものであり、横展開された瞬間に意味を無くします。仮に出来たとしても、劣化コピーが溢れることで市場がコモディティ化し、やはり付加価値は消失します。地方に行くと必ずある、どこかで見たようなゆるキャラやB級グルメが象徴的ですね。

参考にすべきは、原理原則やフレームワークを使った「考え方」であって「成功事例の横展開」ではないのです。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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