クルーズ船を規制しても観光収入は下がらない

こんにちは。築山です。

オーバーツーリズムによる破壊から自然環境や文化遺産を、そして住人の日常生活を守るために世界各地の観光地では入場の規制や禁止などの動きが活発になっています。中でも目立つのは一度に大量の観光客を運搬するクルーズ船(大型客船)の乗り入れ規制です。


クルーズ船に関しては、旅客量の問題だけでなく車数百台分と言われるエンジン排気や乗客乗員による何百万リットルもの排水など港湾汚染や海洋汚染の温床となっているという環境団体のレポートもあり、様々な影響が懸念されています。

 

 

クルーズ船客が牽引する沖縄の観光客数

2018年度に沖縄を訪れた観光客約999.9万人のうち3割は外国人客で、さらにそのうち4割はクルーズ船客(海路客)です。クルーズ船寄港数の日本一は4年連続で福岡県(博多港)ですが、客数では沖縄県は福岡県の2倍近くあります。
沖縄の海路客の増加数は2017年に空路客を超え、2018年の増加数は空路客の2倍になりました。空路客が伸び悩む一方で海路客は順調に伸び続けて100万人を突破、今や沖縄の観光客はクルーズ船客が牽引していると言っても過言ではありません。

 

 

クルーズ船客が下げる沖縄観光の消費額と矛盾した観光政策

沖縄に寄港するクルーズ船の滞在時間は7時間程度です。クルーズ船客は上陸して一目散にドラッグストアへと駆け込み目当てのモノを購入したり、飲食店に入ってお腹を満たしてインスタにアップしたら直ぐに船へと戻ります。クルーズ船客の滞在日数は0日で消費金額は空路客の3分の1しかありません。

 

その結果、クルーズ船客(海路客)を増やせば増やすほど沖縄の観光業は実入りの少ない消耗戦に陥るのですが、当の沖縄県自体が自らの観光資源である海を埋め立てでも官民総出でクルーズ船の誘致をしています。


つまり「消費額を増やし観光収入を増やすこと」を課題としながら消費額を減少させるクルーズ船の誘致を行なっており「観光人材の育成と確保」を掲げながら人材を消耗戦へと導くクルーズ船の誘致を行っているのです。残念ながら沖縄の観光戦略は「世界の流れに逆行した、マネジメント不在の混乱状態」と言わざるを得ません。

 

今ならクルーズ船客を半減させても観光収入は変わらない

上記の数字から計算すれば簡単に分かりますが、沖縄は空路客が1割増えれば海路客が半減しても観光収入は変わらないどころか微増します。そして直近の空路客の前年比は106%です。

おそらく他の国のクルーズ船客の消費額も沖縄と似たような状況なのでしょう。冒頭のボラカイ島やベネツィアのクルーズ船規制の決断は、裏側にそういったシミュレーションがあってのことだと想像できます。

 

観光収入が下がらず、観光資源である自然環境の汚染や破壊を食い止め、住民の日常生活が守られる…クルーズ船を規制することの方がメリットが多い気がしてきました(笑)目先の金よりも持続可能なツーリズムと今後の安定収入のために今何が出来るか?古来より沖縄にあるとされる「自然信仰」が試されていますね。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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