コロナ禍の沖縄観光業

こんにちは。築山です。

ご存知の通り、コロナ禍は沖縄の観光業に大きな影響を及ぼしました。2020年度の観光客数は前年度73%減小、上半期時点で、従業員給与は8〜10%減少、雇用調整助成金を使って雇用維持する観光関連企業が54%、雇用を減らした企業は13%、正社員採用を中止した企業が8%となっています。

需要喚起策としてのGotoトラベルの効果など、コロナ禍の沖縄観光客はどんな人で、どんな消費をして観光収入がいくらあったのか? 例年では既に県が発表している時期なのですが、このブログ執筆時点で未発表のため、観光庁のデータを使ってざっくり見てみます。

 

沖縄はGoto効果なし?:観光収入前年は全国ワースト2位

全国各地域と沖縄の前年比を比較すると、観光客数は全国ワースト3位、1人あたり消費額と観光収入は全国ワースト2位となっています。Goto実施期間(7〜11月)の沖縄の観光客数は全体の約6割で、国内旅行客のうち約7割がクーポン利用客だそうです。そもそも全国平均の1人あたり消費額が前年1割減であったこと、沖縄はそこから更に1割減だったことを踏まえると、期待されたGotoによる需要喚起(レバレッジ)効果は薄かった…と言わざるを得ないでしょう。

ちなみに、この数値で計算すると、沖縄県の2020年度の観光収入は約2,000億円程度と予想します。前年度の観光収入が約7,000億円であったことを考えると影響の大きさが分かりますね。

 

「近場の旅行」か「高級宿にお籠り」

沖縄の数字は無いので全国平均値になりますが、宿泊旅行者の消費項目別の消費額を前年と比較すると、宿泊費は増加しましたがその分交通費が減少しており、消費額全体はほぼ変わらないことから「近場の旅行」か「普段は泊まれない高級宿にお籠り」という旅行パターンが想像できます。

次に、年代別の消費額を前年と比較すると、20代が増加しており、50代以上は年代が高くなるにつれて減少しています。これは、もともと20代が「Z世代」と呼ばれる旅行意欲の高い世代であったことに加えて、当時蔓延していたのが若年層の罹患率が低く、高齢層の罹患率の高いアルファ株だったことが影響しているからです。現在では、若年層の罹患率の高いデルタ株やラムダ株が蔓延しているので、今後のGoto再開後の旅行者は同じ傾向ではないかもしれません。

 

なぜ、沖縄はGoto効果が薄かったのか?

なぜ、沖縄はGoto効果が薄かったのか?詳細は、今後県から発表されるであろうデータを見ないと分かりませんが、いくつかの事情から推測は出来ます。

① 沖縄を訪れる観光客の高齢化

コロナ禍の以前から沖縄を訪れる観光客は高齢化していました。特に、20代(Z世代)の旅行者は、全国的に増えているのに対して沖縄では大幅に減少しています。上述のように、Gotoで最も活性化したのはこの世代で、逆に50代以上の消費額は減少していますから、沖縄のGoto効果が薄くなるのは納得です。

② Goto開始時の「つまずき」

覚えてらっしゃる方も多いと思いますが、Gotoは感染者が急増していた東京都を除外して7月にスタートしました。沖縄を訪れる観光客の35%は羽田+成田経由ですから大きな影響を受けます。加えて、肝心の沖縄自体が感染者急増による県独自の緊急事態宣言を8月に発動させたため、観光最盛期を迎える8月を逃してしまい、Gotoの東京都除外と沖縄の緊急事態が解除された9月からやっと観光客は増加しました。つまり、Goto実施期間だった5ヶ月のうち2ヶ月は本格稼働していないのです。

③ 客筋の悪さ

上述のように、宿泊代の割引をレバレッジとした消費喚起が目的のGotoでしたが、フタを開けてみれば、上述のように宿泊代の増加分は交通費など他項目で吸収され消費額合計では減少し、当初の目論見ほど消費は喚起されなかったのだと思います。むしろ、旅行慣れしていない人や安上がりに旅をしたい人の増加で、オペレーションが煩雑になったことなども話題になりました。つまり、客筋が悪くなったということです。

 

政府は、Goto再開時期の検討に入ったそうです。観光業への依存度が高い沖縄こそ、去年の観光統計データを早期に公表&分析し、Goto効果を高められるような準備をしたいものです。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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