コロナ禍の沖縄観光客の1人あたり消費額は本当に過去最高なのか?

こんにちは。築山です。

沖縄県がコロナ禍の2020年度観光収入を発表しました。前年度から約4,562億円減(64.7%減)の2,485億円だそうです。前回のブログで予測した「2,000億円程度」と近しい数字にはなりましたが、「1人あたり消費額は過去最高」や「比較的所得の高い客層を取り込めた効果」という県の分析には大いに違和感があります。

 

「過去最高額」の違和感①:観光庁の数字と真

そもそも、旅行客1人あたり消費額が観光庁が発表したものと大きく異なっています。それぞれの集計期間と集計項目が違うので金額差がありますが、問題はそこではなく、観光庁の数字が、沖縄の宿泊旅行者1人あたり消費額が前年17.8%減、国内の宿泊旅行者合計でも前年12.2%減であるのに対して、沖縄県の数字は、前年度29.2%増と真逆の結果となっていることです。

念のため、それぞれの過去数年間の1人あたり消費額を調べてみましたが、これを見ると今回の沖縄県の発表数字がいかに異常値であるかが分かると思います。(観光庁の集計は過去の増減額の範囲内におさまっているのに対し、沖縄県の集計は過去にない突然変異的な増加率です)

 

「過去最高額」の違和感②:沖縄は全項目で消費額が増加

観光庁と沖縄県の1人あたり消費額を項目別に比べてみると(観光庁は沖縄の数値がないので全国平均です)、両者共に増加しているのは「宿泊費」で、これはGotoキャンペーンの影響(宿泊代を最大半額補助、上限2万円)によって、高価格帯の宿泊施設の利用が活性化したためです。

問題は、沖縄県の数字が「宿泊費」以外の全項目が増加していることで、これも観光庁の数字と真逆になっています。そして観光庁の数字は、沖縄を含む全地域での旅行者1人あたり消費額が減少していることからも、今回の沖縄県の発表数字の違和感が浮き彫りになります。

 

「過去最高額」の違和感③:集計と算出方法

なぜ、ここまで真逆の数字になってしまうのか?その原因は、沖縄県の集計と算出方法にあるようです。

新型コロナウイルス感染症の影響により、国内客の令和2年4-6月期、7-9月期の調査及び外国客の調査は中止しています。このため、調査を実施できなかった期間については、前年同期の一人当たりの消費額を用いて、観光収入を試算しています。(沖縄県「令和2年度の観光収入について」より)

観光庁の調査方法が「郵送式+オンライン」であったのに対して、沖縄県の調査方法が「空港の搭乗待合室において調査票を手渡し(後日郵送)」だったため、年の半分は調査しておらず、前年の数字をそのまま当てはめて算出した数字を『試算値』と称して発表しているのです。この方法では、実態とかなりかけ離れた数字になることは、皆さんも想像できると思います。

まず、沖縄県では、令和2年4月〜5月に緊急事態宣言が発動され、続く8月〜9月にも県独自の緊急事態宣言が発動されています。4ヶ月にわたって観光施設や飲食店が休業や営業自粛していた期間を「前年同期(=コロナ禍前)の数字」を用いて計算すれば、上述のように全項目の消費額が上がるのも当然です。また、令和2年10月〜令和3年は、前半3ヶ月に関してはGotoキャンペーン実施期間であったため、上述のように宿泊費は大幅に上がります。

このように、沖縄県の数字は、年間通じて消費額が上ブレする方法で計算されています。従って、『試算値』と称しているとはいえ、沖縄県が発表した1人あたり消費額と観光収入は控えめに言っても信用できないレベルですし、ましてや「比較的所得の高い客層を取り込めた効果」という分析は大きな見当違いと言わざるを得ません。コロナ禍で深刻なダメージを受けている沖縄の観光産業を再建するにあたって、こんな稚拙な方法で算出された数字や分析が誰の役に立つのでしょうか?

少なくとも築山は、クライアントと仕事をするにあたって、この数字や分析を参考にすることは止めます。やはり、前回のブログで予測したように、1人あたり消費額は約7万円、観光収入2,000億円弱…という数字を使いたいと思います。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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