円安によるインバウンドは沖縄にとってチャンスであり落とし穴でもある

こんにちは。築山です。

コロナ禍が始まって2年が経ちました。観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によると、2021年の沖縄は、観光客数、1人あたり消費額ともに前年を下回り、全国の中で最も観光収入が減少した地域となってしまいました。コロナ禍前の2019年から比較すると34%まで減少したことになります。沖縄の県民総生産の3分の1が観光関連産業なので、影響の深刻さが分かります。

 

ハワイとの比較

沖縄がお手本とするリゾート地であり、観光客数が同規模だったハワイも、コロナ禍で大きな影響を受け観光客数は沖縄以上に減少しました。その後、ワクチン摂取率の増加や、行動規制の緩和、検疫プロトコル の変更などにより、両者ともに回復基調にありますが、ハワイの国内客がコロナ禍前の2019年を上回る勢いで回復しているのが印象的です。

ハワイの課題は海外客ですが、コロナ禍以外にもインフレによる物価高が懸念されています。また、ハワイの海外客で最も大きな割合(47%)を占めていた日本人観光客は、急速に進んだ円安も加わって今後の減少は避けられないでしょうから、代わりにどの国へのプロモーションを強化するかがポイントになってきます。

 

円安によるインバウンドは沖縄にとってチャンスであり落とし穴でもある

ひるがえって、沖縄にとって円安は、ハワイや海外リゾート地へ行けなくなった日本人にとっての代替地として、特に東アジアの海外客にとって需要を満たす一番近い日本として追い風が吹いているように見えます。そして、今月には観光客の上限撤廃が実施される見込みです。

ここ2年間のコロナ禍で進んだ円安は2012年〜2015年にかけて起こった円安と同じくらいの勢いがあり、その時の観光客数の激増ぶりを記憶している沖縄の観光関連産業の期待が膨らむのも当然です。しかも、上述のようにコロナ禍で深刻な影響を受けているので尚更ですね。

しかし、目の前の収入を追い求めるあまり、安価で気軽なリゾートサービスを望む(客筋の悪い)観光客ばかりを相手にしていると、以前よりも深刻なオーバーツーリズムや消耗を招きかねません。コロナ禍以前から、沖縄の観光関連産業従事者の給与は低く(月給20万円以下が6割)、今や、沖縄の働き手はそんな観光産業を敬遠しています。つまり、円安によるインバウンドは沖縄にとってチャンスであり落とし穴でもあるわけです。

 

同じ轍を踏まないために…

こうした失敗の教訓をどう活かすか? 例えば、ハワイでは、観光客に「その地域の価値観を理解&尊重し行動すること」を求める「レスポンシブルツーリズム」を掲げています。ウミガメやイルカをはじめとする保護動物への接近に高額の罰金が科しているところなどは沖縄と大きく異なりますし、コロナ禍で観光客が居なくなったことで浄化された自然環境を維持すべく入場者の上限設定や休業日を増やし、値上げした入場料(州民は対象外)に見合う体験価値を提供しています。

沖縄県も、コロナ禍の最中に「量から質への転換」を掲げましたが、円安によるインバウンドの下げ圧力(誘惑)に屈することなく、どれだけ高付加価値の観光サービスを創ることができるかが重要になってきます。沖縄のインバウンドに関しては、これまでの海外観光客の詳細な行動&購買データが蓄積されており、それらを分析することで様々なサービスを企画出来ます。例えば、長期滞在する富裕層に特徴的な滞在中の行動や、国別で異なる購入品の傾向などが分かりますし、その背景にあるお国事情みたいなものまで推し量ることが可能です。

上記は、3年前にそうしたデータをまとめたレポートですが、先月から再び売れ始めています。同じ轍を踏まないために、インバウンドでしっかり稼ぐために、今から準備をしている観光産業の方々がいらっしゃるのを感じています。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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