こんにちは。築山です。
1994年に地方アンテナショップの先駆けとして銀座1丁目に開業した「銀座わしたショップ本店」が年明けに有楽町駅前の交通会館へ移転縮小することになったそうです。数ヶ月前にはNHKの朝ドラ効果で売上好調という報道がされていましたが、一過性のブームでは市場と顧客変化に対応できずに膨らませた累積赤字と月額一千万円超の家賃には焼け石に水だったようです。
築山も、東京に住んでいた頃には、銀座での買物の帰りによく寄っていました。特に、地下の泡盛売場の豊富な品揃えと、商品に付けられたコメントカードを読むのが楽しみでした。
地方アンテナショップの実態
一般財団法人地域活性化センターの「自治体アンテナショップ実態調査」によると、東京都内にある地方のアンテナショップは62店舗。店舗の半数以上が売上1億円未満で、5億円を超える店舗はわずか3店舗、そして店舗の80%が山手線内にあり、30%は日本で最も家賃の高い銀座エリアにあります。
店舗の運営目的で最も多いのは「特産品のPR、自治体のPR」で「利益」ではありません。取扱商品の大部分が単価数百円〜数千円の小売業態であり、家賃や諸経費を考慮すると殆どの店舗は赤字のはずです(前職時代、都心の大型店に勤務したことがあるので直感で分かります)。今や、同じ銀座エリアにある国内外有名ブランドの旗艦店でさえ、情報発信とショーケース化に力を入れています。
ECが普及し、デパ地下はこぞって地方の名品を仕入れ、ふるさと納税も活況を呈する今、地方の特産品を手に入れるのは簡単になりました。さらに最近では、近所のショッピングセンターでも沖縄フェアを開催するようになりました。そんな時代に、わざわざ銀座のアンテナショップへと出かける必然性は相対的に低くなります。「業務用取引のために商品を確認したり、商談をしたりする場でもある」という意見もあるようですが、それであれば店舗である必要はありません。この先、地方のアンテナショップが辿る運命は昭和のデパートと同じだと思います。
沖縄県地域ブランドの変化
1年前のブログにも書きましたが、今や沖縄を訪れる観光客の9割近くがリピーターで、10回以上訪問した人も4人に1人を占めるようになりました。また、物心ついた時から沖縄のモノや文化が身近に存在し、LCCで気軽に沖縄へ行くような若い世代も増えています。そういった人たちは、もはや表層的な「沖縄らしさ」でモノやサービスを購入しません。移転縮小したから足が遠のく「県産品ファン」であれば、その程度の関係しか築けなかったということです。ステレオタイプの呪縛から逃れ、認識をアップデートすべきは、我々沖縄県民なのかもしれませんね。
こういうときこそDXが大事なのでは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)はこうした状況を打開するための経営戦略です。DXをIT導入と勘違いしている経営者も未だに居るようですが、経済産業省の定義では、市場と顧客変化に対応し競争上の優位性を確立するべく商品やサービスの顧客価値を上げることであり、そのために業務プロセスやビジネスモデルだけでなく、組織や企業文化をも改革することであり、IT導入はその手段に過ぎません。
その意味で、こうした状況に対する経営戦略は、銀座わしたショップ本店の移転縮小による経費圧縮や県産品の送料補助という「対処療法」以上に、そこに並べる商品価値の向上にリソースを割くことであり、それに必要な情報をITを使って集めることであり(今でもそれなりに揃ってますが)、それらを分析し計画立案の出来る人間を採用し、利権や天下りから自由な組織体制の中で実行させることでしょう。
コロナ禍によって県民総生産の3割を占める観光関連産業の収入が消失し、4割を占める財生存型産業(建設業や公務など)の原資となる補助金の交付額の雲行きも怪しくなり、沖縄への経済投資の根拠の一つとなっていた人口増加も減少に転じる中、県産品の付加価値を向上させ外貨を獲得し労働生産性を上げることはますます重要になってくるでしょう。
築山 大
琉球経営コンサルティング