人材育成のために事業計画書が必要である理由

こんにちは。築山です。

今年は、沖縄県産業振興公社での事業をはじめとして、人材育成に関する仕事を多く行っています。弊社の人材育成コンサルティングは、単発の勉強会ではなく、仕事の実践を通じて社員の成長と生産性を向上させる形式です。その理由は、以前のブログにも書いたように、人間の成長には、知識や技術の習得(=分かる)だけでなく、それらを使って成果を出すことによる思考や行動の変容(=できる)までが必要だからです。

そのために、クライアントには、必ず成果を出すための事業計画書の作成(確認)とセットでお願いし、それに基付く完全オーダーメイドのコンサルティングを行っています。

 

心理的安全性だけでは不十分:きつい職場だけでなく、ゆるい職場でも若者は辞める

リクルートワークス研究所が、大企業の若手社員約3,000人を対象に実施した調査によると、彼等のワークエンゲージメント(仕事にやりがいを感じ、熱心に取組み、活力を得ている状態)を形成するには二つの要素が必要であることが分かっています。

一つは、職場の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる「心理的安全性」、もう一つは、労働市場や同世代との比較の中で自分の成長が今の職場でどれくらい期待できるかという「キャリア安全性」です。そして、この二つの要素に関しては以下のような関係と傾向があります。

・心理的安全性とキャリア安全性はトレードオフの関係にある=バランスが重要
・心理的安全性は高いがキャリア安全性が低い「ゆるい職場」では離職を防げない
・キャリア安全性は高いが心理的安全性が低い「きつい職場」と「ゆるい職場」のスコアは同じ
・「きつい職場」の方が「ゆるい職場」よりも短期の離職意向は少ない

 

人は成果の出ない職場からは去って行く:成果を出す事業計画とロードマップの重要性

このように、心理的安全性だけでなく、キャリア安全性も高い職場にするための手を打つ必要がありますが、昭和の高度経済成長時代とは違って複雑で先行きの不確定な「VUCAの時代」である現在では、企業が社員に職業人生の見通しを提供することはできなくなりました。

現実的なのは、仕事での成果や成功体験を通じて、困難な状況に遭遇したとき、何が起こっているかを秩序立てて理解する「把握可能感」と、(過去もそうだったから)なんとか切り抜けられると思える「処理可能感」を体得してもらい、キャリア安全性を育む機会を提供することです。

だからこそ、冒頭に述べたように、人材育成には、成果を出す事業計画書とそれを実現する具体的なロードマップが必要なのです。どれだけ心理的安全性が確保されていようとも、人は、成果を出せない( ≒ 自分の評価と給料が上がらない)上司や職場からは去って行きます。それどころか、下手をすると、意図せずして「やりがい搾取」と同じになってしまう危険だってあります。


 

人材育成は、事業計画の実行を通じて、企業全体で行う

繰り返しになりますが、人材育成には、知識や技術の習得(=分かる)だけでなく、業務の中でそれを実践し成果を出すことによって思考や行動の変容(=できる)までが必要です。

業務の中で思考や行動を変容させるためには、何が出来て、どんな成果を出せば評価されるのかを予め知らせておく必要があります。従って、事業計画の目標値と連動した評価制度を構築します。

さらに、業務の中で思考や行動を変容させるためには、上司や先輩など周囲とのコミュニケーションやフィードバックを適宜受ける環境や風土、つまり心理的安全性を形成するために「育成者の育成」から始める必要があります。

つまり、人材育成は、人事部や外部に委託すれば済むのではなく、事業計画の実行を通じて企業全体で行うものなのです。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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