こんにちは、築山です。
このブログでも何度も紹介している、台湾経済界を代表する鴻海精密工業。買収したシャープの黒字化〜V字回復〜東証1部復帰を、わずか1年4ヶ月で果たしました。その「スピード経営ぶり」が様々な記事で取り上げられています。
鴻海精密工業流「スピード経営」の内容
例えば、上記リンクの記事でポイントをまとめると以下になるでしょうか?
1. 優秀な人材に再建を任せて口を出さない
→ 特定の組織レイヤーから外す(おそらく戴正呉社長は結果と期間だけをコミット)
2. 目標:黒字化への最短距離を進む
→ 得意分野に絞り込む(テレビの代理製造台数を前年200%に)
→ 作るだけでなく売る場所も開拓する(最大手の中国家電量販店と提携)
→ 製造業の聖域である開発部門を強化(鴻海の培ったEMSのノウハウで磨き直す)
→ オフィスのコスト削減や社長自らも社員寮で生活
3. 貢献度に応じた評価&報酬体型を敷く
→ 賞与で最大8倍の格差(信賞必罰の徹底)
→ 再建という大変な仕事だからこそ台湾大企業の平均を上回る賃金
こうしてみると「スピード」を連想させるアクションというより、企業再建と経営の原理原則ばかりが並んでいる印象です。戴正呉社長と比較するのはおこがましいですが、築山も事業再生コンサルティングの仕事をお引き受けする際には、目標を達成したら、必ず「3」を実施してもらうことを経営者に約束して頂いてます。
例えば「1」の社長自らが社員寮に住むことも、美談やウケ狙いでも何でもなく「自分が豪勢な家に住んでいても利益が出ない」という至極当たり前の理由からだと思います。上記リンクに掲載された戴正呉社長の写真を見てみてください。社内会議中にマスコミを入れて質疑応答をしているかのような風景。我々が一般的に思い浮かべる社長会見の風景じゃありません。とにかく徹底的に合理的な思考と行動をされる方なんでしょう。逆に「社長が豪勢な家に住むことが利益増に繋がる」というのであれば彼は迷わずそうするでしょうね(笑)
当たり前のことを当たり前にやることがスピードに繋がる
少し話は逸れますが、先日、築山が長年サポーターをやっているサッカーJリーグの川崎フロンターレがクラブ創設以来の初優勝をしました。スピードのある超攻撃的スタイルを6年かけて築き上げてきた末の優勝でしたが「スピード」に関して風間八宏前監督が象徴的なことを話していました。
1. 技術のスピード(止めて蹴る)
2. 判断のスピード(ゴールという結果から逆算して効率よくボールを運ぶ)
3. この2つをピッチ上の選手全員が無意識に出来るまで何度もトライ&エラーを繰り返す
前述の鴻海精密工業のシャープ再建と本質は同じだと思います。つまり、スピードを上げるためには、ただ闇雲に速く動くのではなく、当たり前のことを当たり前にやることが結果的にスピードに繋がる…ということです。そのために必要な原理原則の理解と継続的な研鑽、それを実現する人の行動と組織や環境のデザインが必要です。
「働き方改革」の本質もそこにある…
昨今叫ばれている「働き方改革」も、残業禁止や強制消灯などでは絶対に実現出来ません。成果という結果から逆算して、仕事をする人間の意識と行動が変わるような動機付けと環境をデザインすることにあります。手間暇と時間がかかるように思えますが、この『急がば回れを急いでやる』ことが、築山の経験上、これが最も速く目標に辿り着く唯一の方法だと確信しています。具体的な事例や、方法を知りたい方は下記リンクを読んでみてください。
鴻海精密工業のパワーの源泉、台湾のお国事情についてはこの二つを読んでみてください。
築山 大
琉球経営コンサルティング