こんにちは。築山です。
今では皆さんもご存知だと思いますが、沖縄の観光業は、客数こそハワイ並みですが、観光収入では3分の1しかなく、その要因が観光客の消費額(滞在日数)の差であることも、このブログで何度も述べてきた通りです。
そして、その消費額ですが、一向に増える気配はなく、むしろ海外客にいたっては、昨年は10%以上も減少し、これがインバウンド減少の引き金となりました。行政も地元マスコミも、この件に関しては全く触れようとしませんが…。
増加を続ける観光客に対して(今のところは)十分な部屋数を提供できていない沖縄のホテルは、部屋の争奪戦が加熱し、宿泊費も高騰を続けていますが、冒頭にも述べたように全体の消費額は増えていません。
つまり、観光客はどこか他の項目を削って宿泊費に充てているわけです。今回は、どの項目が割りを食ったのかを調べてみます。沖縄観光業の関係者にとっては気になるところです。
割りを食ったのは…この項目(予想通り?)
下記グラフを見れば一目瞭然ですが、宿泊費の増加で明らかに割りを食ったのは買物費です。2011年から2018年の比率変化で見ると以下となっています。
・国内客 ⇒ 宿泊費:+7% 買物費:▲7%
・海外客 ⇒ 宿泊費:+8% 買物費:▲15%
国内客は宿泊費と買物費の比率がちょうど入れ替わっています。海外客は買物費の比率が大幅に減少した一方で、交通費、飲食費、娯楽入場費もそれぞれ増えており、よく言われている「爆買いの終焉」「モノ消費からコト消費への変化」というのが数字でも顕著になっています。
観光客の消費額を上げたければ、県産品を売り込むよりも良質なコト消費を開発した方が良い
そもそも、沖縄の観光客数が急増した理由は、沖縄の魅力ではなく為替レートのボーナスです。2012年から始まった円安によって自国通貨価値の上がった外国人は「買物をするのに一番近い日本」として沖縄を訪れ、円安によって自国通過価値の下がった日本人は「旅行先を近場の海外や国内にシフト」して沖縄を訪れ、相乗効果で観光客が増加したのです。
つまり、海外客・国内客にとって、沖縄旅行の(ぶっちゃけの)魅力は「安価であること」ですから、宿泊費が高騰すれば、他の項目を削ってコストを調整する。真っ先に対象になったのは土産物や県産品などの買物となったわけです。
海外客の爆買いは一巡してこれ以上の需要は望めず、国内客もネットショッピングや大都市圏のセレクトショップやデパートでの物産展が増えるなど、流通開拓によって旅行しなくとも県産商品が手軽に買えるようになった今、観光客相手に県産品を売り込むくらいなら、その労力と時間を、まだ伸びる可能性のあるコト消費に振り向けた方が良いでしょう。
もちろん、モノ消費であっても、特定の国に絞れば拡売できるモノはまだまだ沢山ありますし、コト消費に関しても、直ぐに伸ばせるジャンルもあれば、観光客の満足度が下がり再開発とブランディングが必要なジャンルもあります。
消費額を上げるには、沖縄の観光業が、自画自賛な評価をやめてマーケティングを行い「安価であること」以外の付加価値を造り出す必要があります。その方法や実例は、下記レポートにまとめておきました。
築山 大
琉球経営コンサルティング