沖縄が稼げていない理由

こんにちは。築山です。

沖縄経済の活況(日本一の経済成長率)や地価の値上がりが報道される一方、最低賃金は依然として全国最下位で、貧困問題も改善の兆しが見られません。今や、県民の関心事は、基地問題よりも子どもの貧困問題が上回っています。


経済成長の恩恵が、県民の所得や生活向上に十分に反映されていないのです。この乖離はなぜ起こっているのか?その理由を推察し得る記事がありました。

 

ザル経済:市場も補助金も本土企業の利益に

沖縄経済成長の実態は、インフラ建設&整備の公共事業と、増加する観光市場を当て込んだホテル建設などによる土木建築が牽引しており、その財源の大部分は、人口1人あたり全国5位となる国からの補助金であり、その中の国庫支出金(他県にはない一括交付形式の沖縄振興予算)だけなら全国1位です。ちなみに沖縄県の人口は145万人で全国25位です。


それらを運用して行われる公共事業は、内閣府所管の各機関によって運用されていますが、受注企業の約半分は県外企業だそうです。

琉球新報 2019.9.29「つまみ食いされる沖縄振興」より

 

また、沖縄経済全体で見ても、沖縄県内の利益の21%(1兆円超)が県外企業に流出しており、これは全国ワースト4位。沖縄県は、生み出された需要やお金を、県内で循環させたり留めておくことの出来ていない、いわゆる「ザル経済」なのです。

 

沖縄経済の原動力が「付加価値」よりも「安価である」ことによる弊害

こうした問題は、補助金ロンダリングの経済構造に原因がありますが、同時に沖縄の企業や産業構造にも原因の一端はあります。沖縄の経済活動の大部分が「付加価値」ではなく「安価である」ことを原動力にしているため、そこの勝負になれば資本力で勝る県外企業に勝てないからです。

これらは、下記のような事実が証明しています。

沖縄の中核産業である観光業において、観光客数は20年の間に2倍以上に増えましたが、その経済効果を計る指数となる雇用誘発倍率は増えるどころか減少しています。
その背景には、沖縄の魅力ではなく、単なる円安によって増加した外国人観光客に、消費額やリピート率の向上に繋がる有効な観光コンテンツを開発できなかったこと、消費額が空路客の3分の1しかない海路客(クルーズ船客)に依存し過ぎた観光行政の失策があります。

また、観光業に次ぐ中核産業と位置付けられ、行政によって主導された沖縄の情報通信業(IT産業)の育成が、その実態は、安価な労働力を背景にしたソフトウェア開発の下請けやコールセンター業務であり、沖縄の情報通信業の労働生産売上は全国平均より3割低くなっています。

 

「安価である」ことが、さらに沖縄の稼ぐ力を奪う

沖縄経済の原動力を「安価である」ことにすると、厳しい労働環境や低い賃金となって従業員にしわ寄せが行きます。市場経済において、従業員は購買者でもありますから、そうしたことによる余暇時間や所得の減少は消費の低下に繋がります。消費の低下によって、地域企業の売上と利益は上がらず、それがさらに労働環境や賃金に影響する…という負のサイクルに陥り、沖縄の稼ぐ力は弱体化していきます。

沖縄の業界団体や一部の識者が言うような、県内企業への優先的な事業発注や優遇措置も、ある程度は必要ですが、そもそも論として受注や優遇されるに足るだけの付加価値の高さやある程度の生産性を兼ね備えている必要はあります。そこを疎かにして、従業員に犠牲を強いる企業の存在こそが、沖縄が稼げない理由の一端なのです。

労働生産性の低さは、最後に自分に返ってきます。弊社が、沖縄地域に限定して経営コンサルを行う理由はここにあります。労働生産性を上げて稼ぐことで、県民の生活向上に寄与することが目標です。

 

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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