こんにちは、築山です。
前回は、沖縄の人手不足を数字面から把握しましたが、今回は、それに伴って沖縄企業で発生している財務的な問題について書いてみます。この投稿から読み始めた方は、以下を読んでからだと一層理解が深まると想います。
以下のグラフは公表されている各種数字を使って10年間の沖縄企業の従業員一人当たり売上・粗利・営業利益の伸率を全国平均と比較したものです。
従業員一人当たりの営業利益は10年で半減
前回書いたように、沖縄県は人口増加にともなって市場も拡大しているので、売上と売上総利益の減少は全国平均よる緩やかな状況にも関わらず、営業利益は全国平均と比べて低く なんと10年前の半分にまで減っています。(ちなみに、各数値の2008年以降の落ち込みはリーマンショックの影響によるもの)
営業利益減少の原因の一つは人件費の急激な上昇
沖縄企業の営業利益の減少は人件費の上昇と深く関係しています。2008年から2011年までの人件費の上昇は、団塊世代の退職を補うために採用者数を増やした影響によるもので、2012年以降のさらなる上昇は、生産年齢人口の減少によって求人倍率と最低賃金が上昇した影響です。もちろん、営業利益の減少は人件費の上昇だけでなく原油価格の高騰による材料や輸送費上昇などの影響もありますが、企業の平均的な労働分配率から考えると人件費上昇の影響がはるかに大きな要因になっていることは確かです。それを裏付けるように、沖縄企業の売上に占める人件費は10%を超えており全国平均の1.3倍になっています。
誤解して欲しくないのは「人件費の上昇が悪い」と言いたいのではない、ということです。沖縄の最低賃金は、上がっているとはいえ、未だ全国最下位で全国平均との格差はますます広がっているからです。
沖縄企業の労働生産性は全国平均の約半分
本当の問題は「人件費の上昇に見合うだけ、売上・売上総利益が上がっていない」ということです。それを裏付けるように、沖縄の労働生産性(従業員一人当たりの売上総利益)は、全国平均と比べてあらゆる業種で低く、平均すると約半分になっています。
こうした数字から分かることは、今の状況は企業の経営者にとっても従業員にとっても良くない、ということです。最近「沖縄経済は拡大」的な報道が飛び交っていますが、実際に沖縄企業の方々と話すとかなりの割合で返ってくる「う~ん、どうなんだろう?」という、どこか他人事というかビミューな表情の数々は、営業利益の減少、つまり「言われてるほど儲かってないんだけどな…」「ヒトがね…」という部分に因ることが改めて分かりました。
次回はは、人手不足に潜む問題について、これまでのコンサルティング現場で行ってきた解決ポイントを含めて語ります。
築山 大
琉球経営コンサルティング