沖縄の「公務員志向」はどれぐらい凄いのか?

こんにちは。築山です。

沖縄で生活してよく聞くのが「公務員になるために会社を辞める人が多い」というものです。コンサルティングの現場やクライアント企業の方々からも「新入社員の中には、公務員試験に落ちたものの、引き続き働きながら公務員試験の勉強をしている人も多く、合格すると辞めていく」という話を聞くことも少なくありません。民間企業が、あたかも公務員試験受験の腰掛けのような扱いを受けている…こんな話は他の地域では聞いた事がありませんでした(それとも今は、結構普通の事で、築山だけが遅れているのでしょうか?)。あまりに頻繁に聞く話なので、自分なりにデータを調べて確認してみましたが……ものすごい衝撃を受けました。

 

沖縄県の公務員試験の倍率は全国ダントツの一位

一口に公務員と言っても多岐に渡るので「一般行政職」と呼ばれる県庁などの地方自治体の各機関で働く地方公務員の試験データを調べました。まず、受験倍率(最終合格者数÷受験者数)は22.5で全国平均の約3.5倍、二位の大阪府の約1.7倍も高いダントツの一位です。沖縄で公務員になる厳しさは、なんと日本で最難関とされる司法試験のそれとほぼ同じということになります。
そして「受験者の本気度」を表すとも言える受験率(受験者数÷申込者数)は86.3%で全国二位。これらの数字は、まさに
沖縄の「公務員志向」の凄まじさを裏付ける数字です。

 

背景にあるのは平均年収の低さと安定雇用への渇望

次に、上述の受験率と平均年収との相関を全国で調べてみると、平均年収の低い地域ほど公務員試験の受験率が高くなる傾向が見られます。沖縄県の平均年収は約337万円で全国最下位、一般行政職の平均年収は約400万円で民間企業ほどの地域差はないことを考えると「民間企業より給料が高いから」というのが、沖縄の公務員志向の強さの大きな理由の一つだと思います。
さらに、沖縄で就労者比率の高い建設業や宿泊飲食業は、業種の性格上、雇用が安定せず離職率の高い産業ですし、中小企業が99.9%を占める土地柄もあり「安定雇用への渇望」ということも大きな理由だと思います。ちなみに「沖縄は建設業と宿泊飲食業の比率が高い」とよく言われますが、実は最も高い比率の業種は公務員で全国平均の約1.7倍も高くなっています。すでに沖縄は公務員の多い土地なんですね…。

 

しかし、2025年に公務員は最大の余剰人員を抱える業種となる…

日本は、人口減少、特に生産年齢人口の減少によって人手不足に突入しています。沖縄の生産年齢人口も2012年から減少に転じており、総人口も2025年あたりから減少すると予想されています。殆どの業種が深刻な人手不足に陥る一方で、人と税収の減少によって機能と組織のダウンサイジングを迫られる公務員は、このままいくと日本で最大の余剰人員(245万人)を抱える業種となってしまうことになります。
「年収と雇用の安定」という魅力で沖縄で圧倒的な人気を誇る公務員ですが、この数字を見る限り年収が下がる可能性は否定出来ませんし、そうでなかったとしても、民間企業へ(おそらく、そのとき最も重要な産業の一つになっているであろう医療・介護系の仕事)への出向を命じられることだって予想出来ます。

余剰人員を抱えたとしても、公務員(Public Servant)はとても重要な仕事です。だからこそ、もし「年収と安定雇用」という理由だけで、公務員試験を受けようと考えている方々がいらっしゃるならば、こういった数字や将来起こりうることを踏まえて判断をして欲しいと切に願うばかりです。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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