こんにちは。築山です。
ブログがバズり、プレジデントオンラインに寄稿してから、沖縄の民間企業に加えて、沖縄の行政や公的機関からの相談も増えています。
先日、公的機関を運営する沖縄の某企業からコンサルティング依頼を受けました。依頼内容は『マーケットの変化と規制緩和を受けて今後の活動について、現場の意見集約をして県に提出する』というものです。
実はこの案件、既に沖縄県から業務委託を受けて派遣された本土のコンサル会社が行っていましたが、納期一ヶ月前にも関わらず具体的な進展がなく、築山のブログを読んだ企業の現場社員が依頼をしてきたのです。言い換えれば、コンサル屋のコンサルをして欲しいということです。
県から派遣されたコンサル会社が作った資料と犠牲になった現場
業務進捗を把握するため、双方の承諾を得て、本土のコンサル会社が作成した資料を見せてもらって絶句しました…。
そこには、県のHPなどからグラフをコピペしただけのページが並び、分析や仮説思考の形跡は無く、誰でも思いつくような抽象的で当たり障りのない結論が、難解な言葉や流行りの横文字によって覆い隠されているだけの代物でした。これでは『現場の意見集約』ができるワケがありません。
県が、このコンサル会社に支払った報酬額を聞きましたが、相場の約1.5倍というところでした。当然ですが、この金額の出所は税金・補助金です。ちなみに、困り果てた現場メンバーがお金をやり繰りして築山に提示してきた報酬はその1/200の金額でした。県にはお金があっても、この企業にはないのです。
通常であれば、お断りする案件ですが、沖縄企業が本土コンサル会社の食い物にされるのを黙って見過すことはできません。戦略立案や意見集約までは無理でも、市場シェアや競合状況、顧客嗜好の変化など、マーケティング戦略を立てるのに必要なデータ分析を揃えて渡しました。なんとか上手くいって欲しいものです。
ちなみに、この本土コンサル会社のホームページには『沖縄の補助金は地域のために有効活用されてるとは言い難い。例えば、マーケティング事業と言いつつも、広告代理店などに多大な委託費を払い一過性の広告やイベント事業を繰り返している…』というような趣旨の、自分達のことは棚に上げてコメントしていますが、でも、これは実際その通りで、例を挙げれば枚挙にいとまがありません。
県から委託を受けた代理店が出した、あり得ないマーケティング戦略
例えば、沖縄の代表的な特産品の一つである泡盛には、2015〜2017年の3年間で2.1億円の補助金を投じて「琉球泡盛県外展開強化事業」なるものが展開されましたが、出荷量の減少を食止めることは出来ず14年連続で減少しています。
そんな状況下で、県から委託された代理店が出した答えは『泡盛に触れる機会が増えれば消費拡大につながるはず』というもの。さすがに、これにはひっくり返りました。
この考え方は、マーケティングの世界では「プロダクトアウト」と呼ばれ「顧客ニーズに応えて良い商品を作れば売れる」という意味ですが、14年連続で減少している市場で通用しないのは明らかです。「触れる機会が増えれば消費拡大につながる」のであれば14年連続で出荷量は減少しませんし、ピーク時の6割まで落ち込んだ現状は、もはやそんな段階ではありません。
もう、マーケティング戦略としてはメチャクチャなんですが、依頼主である沖縄県が何も言わないので、このまま突っ走ってます。その僅か1ヶ月後には、羽田空港で大量のタダ酒を振る舞ってました…。
14年連続で減少を続け、ピーク時の6割まで落ち込んだ市場は「衰退期」に当てはまります。マーケティングの原理原則だと、衰退期に採るべき戦略は、ターゲットと商品セグメントを絞り込み緊密な販売関係による収益安定化と、市場規模に応じた組織のスケールダウンです。イベントを開催し、不特定多数にサンプル(タダ酒)を配布するのは、その正反対です。
選ばれる側の提供価値と選ぶ側の能力
コピペ資料を作る本土のコンサル会社や、あり得ないマーケティングをする代理店も酷いですが、そこに依頼している依頼主(県)も同様です。選ばれる側の提供価値は低く、選ぶ側もそれを見極める能力に欠けている…。
ただ、ここに書いたように、誰が見てもアウトだと分かるレベルだと「本心では変わりたくない人たちの利益と、変えるふりをする人たちとの利益が合致し、そこに税金と時間が費やされているのでは?」…と下衆の勘ぐりをしてしまいます。『沖縄のザル経済』という状況には、補助金に群がる本土企業だけではなく、どうやら沖縄の内部にもその要因はありそうです。
築山 大
琉球経営コンサルティング