こんにちは。築山です。
沖縄県の観光客数は、3ヶ月連続で前年9割減になることが確実視されており、新型コロナウィルスが沖縄の観光業に与える影響は、約半年前にこのブログで予想した以上になることが確実になってきました。
観光客の落としたお金をそのまま地元経済に還元できないザル経済とはいえ、それでも沖縄県にとって観光業は、多くの関連企業や雇用者が関わる重要な産業であることには変わりません。県労働局は、6月下旬の時点で解雇・雇い止めが少なくとも626人と発表していますが、築山は、実際はそれを遥かに上回ると予測しています。
沖縄の雇用者の4人に1人は観光業に従事している
県の報告によると、沖縄で直接的・間接的に観光業に関わっている雇用者の人数は142,734人(①)、経済センサスによると、沖縄県の雇用者数は553,619人なので(②)雇用者の4人に1人以上となる26%が観光業従事者になります(①÷②)。
そのうち、3人に1人近くが失業・雇用調整の状況にある
上述「観光産業実態調査」のアンケートでは、コロナウィルスによるマイナス影響を受けた企業(98.8%)のうち、その対策として『人員削減・調整』と答えた企業が28.9%あるので(③)、計算すると約41,250人が失業・雇用調整の状況にあることになります(①×③)。観光業だけでこの数ですから、県労働局が把握している626人は氷山の一角であることがよく分かります。
消失した観光関連収入は約2,740億円
観光客数が9割減となった4月〜6月は、いわゆる「かき入れ時」で、例年は3ヶ月で約250万人が来沖していました。観光客1人あたりの消費額が約7.3万円なので観光収入は約1,825億円、雇用誘発率を掛け合わせた経済波及効果に換算すると約2,740億円が消失した計算になります。
Go to キャンペーンは沖縄の観光産業を救済出来るか?
このように、雇用や経済に大きなダメージを受けている(特に地方の)観光関連産業にとって、その救済を目的として税金約1.7兆円を投じて実施される Go to キャンペーンは、有難いものになるはずでした。しかし、ここにきて「第2波」とも言える首都圏や大都市を中心とした感染者の急増によって東京都のみが除外される事態になりました。
加えて沖縄では、本土由来の感染ルートに加えて、米軍基地で米国由来のクラスタも発生しており現時点での在沖米軍感染者数は140名超、県内の累計感染者数を数日で超えそうな事態が発生しています。
感染拡大のリスクを負ってでも、地域の雇用や経済基盤の破壊を回避すべきか?それとも、地域の雇用や経済基盤破壊のリスクを負ってでも感染リスクを減らすべきか?おそらく、どちらを採っても批判は免れないジレンマです。地元紙が行った沖縄県市町村長へのキャンペーン可否のアンケートによると、7割の市町村長は「延期すべき」と回答していますが、この市町村は、医療施設の脆弱な離島か宿泊施設や収容人数の少ない、つまり「観光収入にあまり依存していない」市町村であり、宿泊施設や収容人数の多い市町村の首長は「予定通り実施すべき」もしくは「保留(明確に延期は表明しない)」という傾向が見られ『背に腹は変えられない』(雇用と経済を優先)という「本音」が浮かび上がっています。
しかし、沖縄の場合、キャンペーンから東京都が除外されたことは大きな痛手となります。なぜならば、来沖観光客の約半数は東京方面経由だからです。勿論、全員が東京都在住者ではありませんが「宿泊旅行統計調査」の実績から推察すると全体の約30%は東京都在住者であり、この時点でキャンペーンの効果予測は3割減とならざるを得ません。
日本の国内旅行市場は10兆円強、この市場金額の2割弱の税金を投入して行われる旅行需要創出予測は最大55.1%、ざっくり言うと「消失した観光収入の半分を取り返す」が目標になりますが、沖縄県の場合、東京都の対象除外、米軍基地でのクラスタ発生など、直前に起こった混乱や不安要素を加味すると、キャンペーンをやっても「観光収入の約3割程度の回復」が良いところでしょう。
勿論、これも政府がちゃんと効果測定をやらなければ本当の効果は分からずじまいですが…。
築山 大
琉球経営コンサルティング