回復基調の沖縄観光業〜コロナ前からの変化〜

こんにちは。築山です。

コロナ禍を経て、沖縄の観光業は回復基調にあります。2023年度は、過去最高を記録した国内客が牽引し、観光客数はピーク時の85%まで回復。さらに、人件費や物価高による旅行代金の値上げによる1人あたり消費単価の上昇もあり、観光収入も過去最高額を更新しました。その勢いは2024年度に入っても衰えず、8月までの累計観光客数は前年118%(速報値)となっています。

 

国内では「一人勝ち」状態の沖縄

観光庁のデータを使って、国内客の2023年実績をコロナ前の2019年と比較してみると、延観光客数は北海道から九州まで全ての地域で減少したのに対して沖縄だけが10%増えています。1人あたり消費額は他の地域と同じく増えており、延消費額の増加率はダントツ1位でした。2024年上半期を2019年の同時期と比較しても、延観光客数はさらに15%増、1人あたり消費額も他の地域と同じく増加、延消費額の増加率は北海道とほぼ同じです。この一年半の実績で見ると、コロナ後の国内観光は、沖縄の「一人勝ち」状態と言っても過言ではないでしょう。

 

好調の要因:円安ボーナスによる代替地リゾートとしての沖縄

沖縄が好調な要因は、2022年から始まった円安の影響です。自国の通貨価値が下がったことによって、海外旅行に出かける日本人は2019年の半数以下にまで激減。2024年になっても6割程度しか戻っていません。日本人に人気のハワイやグアムといった海外リゾートや、近場である台湾の代替地として、沖縄が選ばれるようになりました。これは、2012年からの円安でも同じ現象が起こっています

 

外国人観光客の戻りが遅い理由

ただ、当時と違うのは、自国の通貨価値が上がった外国人観光客数が増えていないことです。特に、コロナ前は訪日外国人観光客の3割を占めていた中国人が、自国の不況による経済的問題と、日本の汚染水放出という政治的問題の影響から激減していること、コロナ後の観光業のリスタートがほぼ世界同時に始まったことで、他国との観光客の奪い合いになっていることなどが原因です。2023年の訪日外国人は、2019年の8割弱、さらに沖縄への訪問率は6割程度に減少したことから、沖縄を訪れた外国人観光客は、2019年の3割、2024年も7割弱に留まっています。沖縄に外国人観光客が戻るにはもう少し時間がかかりそうです。

 

元の木阿弥に戻らないために:「観光客数」ではなく「人泊数」で見ると…

沖縄県は、観光業の「量から質」への転換を図るため、目標値の指標をこれまでの「入域観光客数」から「人泊数(延宿泊数)」にシフトすることで、滞在日数や消費額の増加を目指しています(しかし、地元メディアが相変わらず「観光客数」で報道しているのがとても気になるのですが…)。

上述の観光庁のデータで見ると、2024年上半期の1人あたり宿泊日数と人泊数(延宿泊数)は前年よりも減少しています。延旅行者数が伸びているので今のところは問題ありませんが、政府による「全国旅行支援」が去年末で終了し、今後も人件費や物価高による各種旅行代金の値上りが続けば、観光客はさらに宿泊数や域内での消費を削る可能性も出てきます。実際、沖縄県の調査では、2023年度の国内客1人あたりの消費額は減少しています

また、コロナ禍の中でもホテルの開業ラッシュは続き、2019年と2023年を比較すると、施設数で約200、部屋数で約9,500増えています()。人件費や物価の高騰などによって宿室単価は上がっていますが、ホテル間の競争は激化し客室稼働率が10%下がっているため、RevPAR(販売可能客室1室あたり宿泊収入)は下がっています。

 

確かに、コロナ明けの沖縄観光業は好調ですが、こうして細かく見ていくと、いずれ宿泊日数や消費額の減少に繋がりかねないような兆候がいくつか見られます。2年前に投稿したブログで懸念していたことが現実になって元の木阿弥(稼げない観光業)に戻ってしまわないように注意が必要です。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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