画像:株式会社泡盛倉庫より
こんにちは。築山です。
皆さんもご存知のように、泡盛は沖縄を代表する特産品であり、日本最古の蒸留酒としても有名ですが、市場や顧客嗜好の変化によって14年連続で出荷量が減少しています。
県や酒造組合は、出荷量を上げるべく様々な取り組みを行っていますが、この記事を読んで暗澹たる気持ちになりました。
その理由は「泡盛をよく知らないから飲まない人が東京に5割も居る」からではなく(おそらく県や酒造組合からの依頼を受けて仕事をしている)沖縄の某広告代理店が「泡盛に触れる機会が増えれば消費拡大につながるはず」という今どき誰も使わない「プロダクトアウト」の思想に基づいたコメントをしているからです。
自らを客観視できないことの「イタさ」
「プロダクトアウト」とは、対となる「マーケットイン」と共に、商品やサービスの開発や販売局面での考え方です。前者が「良いものを作れば売れる」という「作り手ありきの視点」であるのに対して、後者は「顧客が望むものを作って売る」という「顧客ありきの視点」です。
そして、今の時世では「プロダクトアウト」の商品やサービスは世界中でもごく限られています。すぐ思いつくのは、アップル社の商品や、フェラーリ社の車など「ある特定の顧客との間に絶対的な信頼関係が成り立っている一部のブランド」です。実は、そうしたブランドでさえマーケティング調査はガンガンやってたりします。
確かに泡盛は素晴らしいお酒ですが、こうしたブランドの商品と同じレベルの知名度や顧客支持はありませんし、むしろこうした「プロダクトアウト」的な思想にあぐらをかいていたから14年連続で出荷量が減少しているのだと思います。
そうやって考えてみると「泡盛に触れる機会が増えれば消費拡大につながるはず」というコメントが、いかに「イタい」かが分かると思います。泡盛という商品やそれが売れてないことが「イタい」のではなく、売れていない理由や自らの状況を客観視できていないから「イタい」のです。
そして、効果のない「タダ酒の振る舞い」が始まった
おそらくこの「プロダクトアウト理論」のままコトが運んでいるのでしょう。コメントから約1ヶ月後の先日、羽田空港の国際線ターミナルで泡盛の試飲が行われています。
記事には「初日は想定の200人を超える500人が試飲した…」と書かれており「予想の二倍も来た!」と言いたいところなのでしょうが、8月の羽田空港国際線の利用者数は28万人/日なのでヒット率は0.18%。一般的にダイレクトメールのヒット率は1%程度と言われてますから、イベント用のブースやPRツール製作費や人件費などを考えると、費用対効果はかなり悪いですね。
税金を使っているからこそ「成果」を出さなければならない
これが、民間企業が経費を使ってやるイベントであれば何も問題はないのですが、内閣府が旗振りを行い、沖縄県がそれに乗っかって、税金を使って行なっています。
それだけに留まらず、そもそも沖縄の酒類には、酒税法の減免措置が半世紀近くも適応され続けており、その原資となる税金が、本土よりも安い金額での酒類購入や、泡盛酒造所の赤字補填などに使われています。ちなみに、買収されて再建計画が始まった「ワッター自慢の」オリオンビールの純利益は約9割が減税効果とされており、どうやって「稼ぎ方」を健全化させるかが再建のカギとなっています。
残念ながら世の中には、口では「仕事の目的は成果を出すこと」と言いながら、実際には◯◯をやりましたという「履歴づくり」でお茶を濁している人や組織が多いのが実情です。そして、自分たちで稼いだお金ではない補助金が、状況をさらに狂わせます。
そういった人や組織と補助金によって形成された酒に関する経済利権が(間接的に)貧困などの社会問題や、全国一の早世死亡率などの健康問題の温床となっているのは皮肉で悲しいことです。
泡盛やオリオンビールを海外で拡売するなら
文句ばかり言っても見苦しいだけなので「もし築山が、泡盛やオリオンビールの海外拡売担当だったら?」という想定で具体的に改善案を考えてみます。
沖縄を訪れる外国人観光客は、台湾・中国・韓国・香港の順で全体の約8割を占めています。この中で泡盛などの酒類の購買率の高い国は1ヶ国だけです。しかも、その購買率は他3ヶ国の2倍以上もありダントツに高いのです。これは、国際機関による飲酒率ランキングの結果とも符合します。
国名は下記に書いておきましたが、他国よりこの国の優先順位を上げ、予算や時間や人員などのリソースを集中させて出荷量の減少を抑制することから始めます。そしてその国の価値観や社会背景を踏まえた飲み方や提供するシチュエーションの提案も行います。
また、泡盛に関しては、株式会社泡盛倉庫様による『誇酒プロジェクト』という素晴らしい取組みが行われており、廃業した宮古島の「千代泉」という泡盛に新たな付加価値を加えつつ、泡盛の文化自体をリブートしようとしています。
繰り返しになりますが、仕事の目的は「履歴づくり」ではなく「成果を出すこと」です。単に頑張るのではなく正しい方法で頑張ること、単にスピードを上げるのはなく無駄な工程を廃することで結果的にスピードが上がること。
成果を出さないと、生産性は上がりません。生産性が上がらないと利益は上がりません。利益が上がらないと給与は上がりません。「履歴づくり」をやめにして「成果につながること」を行うこと。経営コンサル屋として築山がご提供する価値はここにあります。
築山 大
琉球経営コンサルティング