ファッションではなくライフスタイルを

こんにちは。築山です。

季刊誌『自遊人』の2016年11月号は、ポートランドとサンセバスチャンという「住んでみたい街ツートップ」が一冊に特集された築山にとっての「神号」で、何度も読み返しています。(現在は品切れで電子書籍での入手のみ可)

自遊人 2016年11月号 Creating Sustainable Lifestyle
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本誌には「お洒落なカフェやブリュワリー」みたいな情報も「お得にバルをハシゴする方法」みたいなノウハウも載っていません。
この二つの街がどうやって出来たのか?なぜ、この二つの街は人を惹き付け続けるのか?実際にそこで仕事をしたり、生活をしていたプロフェッショナル達の対談形式で、文化・経済・行政の視点などからの分析が載っています。みなさんご存知のように、実際この二つの街は観光客も移住者も増加しているんですね。

 

ライフスタイルは観光や移住のモチベーションとなり得る

本誌で語られている内容をまとめると『そこに理想となるライフスタイルがあるから』という一言に尽きます。
築山の定義するライフスタイルとは「価値観の選択とそれに基づく行動の集積」です。その意味で、変化と消費自体をエンジンとするファッションとは大きく異なります。

観光にしろ移住にしろ、長期滞在したくなり、何度も行きたくなる場所というのは、そこに滞在目的となるライフスタイルがあるものです。
自分が今住んでいる日常生活の場よりは良いけど、ラスベガスやドバイみたいな非日常でもない。自分の生活の延長線上にある、実現可能な理想の生活がある場所…と言うと分かりやすいでしょうか?

観光や移住の目的となるライフスタイルが醸成される場所には、4つの条件が必要です…

① ウェルネスを感じる自然環境
② 生活インフラの整備
③ SDGs(経済圏と高い生産性)
④ 地域住民のQOLと繋がり

 

ポートランド:全米で最も住みやすい街

「全米で最も住みやすい街」の称号を持つポートランドは、上述の4つの条件がしっかりあります。まず、ロッキー山脈の麓に位置するオレゴン州の豊かな自然があり(①)70年代の乱開発と環境破壊の反省から「都市開発境界線」を設定して住民の生活を軸にしたコンパクトシティ作りを行っており(②)その運営や政策決定の大部分を住民自身の手で行ってきました(④)。
オレゴン州にはNIKEやColombiaなど世界的な企業の本社がありこうした企業の税収や雇用などが土台にあります(③)。ちなみにオレゴン州の消費税は0%です。

ポートランドを語るときによく引き合いに出される「タトゥと長い髭が特徴のクリエイティヴ系の人達が経営するお洒落なカフェやブリュワリー(③)」などは、リーマンショック後の価値観の変革の中で、こうしたポートランドの歴史やライフスタイルに共感して移住してきた人がもたらしたものです。

ポートランドに住むさまざまな世代・職業・人種を繋げているのは、この街が昔から培ってきたライフスタイルを拠り所にした多様性の尊重であり、労働生産性の高いサービス業や政治への参加を行う住民のQOLの高さがそれを可能にしています。

 

サンセバスチャン:世界一の美食の街

スペインはバスク地方のサンセバスチャンは、人口一人あたりのミシュランの星の数が世界で一番多い街として有名で多くの観光客が訪れていますが、この街も上述の4つの条件が当てはまります。

この街は、19世紀後半から王族御用達のリゾート地として栄えたところで、半径50km圏内でワインから海の幸、山の幸に到るまで殆どの食材が入手出来る環境にあります(①)、ご存知のようにバスク地方はカタルーニャ地方と並んで中央政府(マドリード)への対抗意識が高く、バスク料理は民族意識の表現手段として、料理人達はレシピやノウハウを共有しながら共に切磋琢磨する環境がありました(④)

ユーロの導入によって経済が活性化して人の行き来や投資が盛んになると(②)そこから「アケラレ」「アルサック」「ムガリッツ」といったレストランがミシュランの星を獲得し、それらが牽引してサンセバスチャン全体のレストランやバルのレベルを引き上げ、さらには農業や漁業など第一次産業の活性化し地産地消が促進されました(③)

世界中から観光客が訪れる「美食の街」の源泉は、自然の恵みと民族の誇りとしての料理文化を中心に据えて、互いに助け合いながら時間をかけて愚直にその質を追求し続け、世界レベルにまで押し上げた地域住民のQOLにあります。

 

ファッションではなくライフスタイルを

もうお分かりだと思いますが、この二つの街は「人が集まるから」とか「人気があるから」という理由ではなく、自分たちの価値観やライフスタイルを具現化する手段の一つとしてカフェやレストランをやっています。

自分たちの土台となる自然環境やウェルネスを守るため「足るを知る」を意識し、それを可能にするため、高付加価値の商品やサービスを生み出し、出来るだけ自己完結する経済圏を作るべく互いの知見や知性を持ち寄っています。変化と消費自体が目的のファッションではなし得ないことです。

観光客や移住者がよく話す「その土地の生活や文化を見たり体験したい」のはこうしたライフスタイルだと思います。借り物(ファッション)ではなく、歴史や文化に根ざしたライフスタイルを地域住民が送っていることこそが最高の観光(移住)コンテンツなのです。

 

参考文献:JTB/経済産業省「国際競争力を持つリゾートの要件」

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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