こんにちは。築山です。
2018年度の沖縄県観光収入が発表されました。「過去最高を更新」という見出しの裏で、海外客の観光収入(インバウンド)は前年▲2%の減少に転じました。これまでの観光収入の増加額や伸率から見ても、沖縄の観光業を牽引してきたのは海外客であることは明らかですから、このマイナス・インパクトは見過ごせません。地元新聞の記事中ではスルーされていますが…。
インバウンド減少の要因
インバウンド減少の要因は「消費額の大幅な減少」であることは明らかです。観光客数は増えていますが、消費額がそれを上回って減少したことにより観光収入が減少したのです。つまり、沖縄のインバウンドビジネスは「やればやるほど儲からない消耗戦」であることを意味しています。
具体的には、空路客の消費額が前年▲10%も減ったことと、消費額が空路客の1/3しかない海路客(クルーズ船客)の増加によって消費額が減少しました。
クルーズ船客を増やせば増やすほど海外客の消費額は減ります。また、クルーズ船は港湾環境や海洋の汚染の温床となり、今やオーバーツーリズムの象徴となっています。にも関わらず、行政は積極的にクルーズ船の誘致に取り組んでおり、知事の掲げる『SDGs(持続可能な開発目標)の理念を反映した沖縄振興計画』と思いっきり矛盾する動きになっていますね。
消費額の増加=滞在日数の増加と、地元銀行シンクタンクの恐るべき「提言」
「消費額=滞在日数 × 1日あたりの消費額」です。沖縄がお手本とするハワイは、観光客数こそ同規模ですが観光収入は約3倍の差があります。そして、1日あたりの消費額はほぼ同じで、滞在日数の差がそのまま消費額と観光収入の差に繋がっています。
このブログでも何度か述べてきましたが、沖縄のインバウンド需要の正体は、沖縄の持つ魅力ではなく円安による為替レートボーナスに起因するモノ消費です。
さらに、恐ろしいのは、地元銀行シンクタンクが「沖縄の海外客はアジア圏が多く滞在日数を増やすのは難しいから、既存の港&空港の拡張と新たな空港建設を行うことでさらに観光客数を増やせばハワイ並みの観光収入を得られる」という『提言』をしていることです。
ハワイの島面積の1/7しかない沖縄県が、現在、ハワイと同じ数の観光客を受け入れているのです。観光客の数を約3倍にしたら1㎢あたりの観光客数は1万人を超えてしまいます。観光客が海にこぼれ落ちます。冗談抜きで…。
このように、原因を理解することなく自分たちの目の前の稼ぎばかりに目を奪われ、訪沖した観光客が再訪したくなったり、滞在日数を費やしたくなるような観光コンテンツの維持発展を後回しにしてきたツケが消費額の減少という結果なのです。実際、沖縄の海外観光客のリピーター率は低く、しかも、訪問回数が多い人ほど滞在日数が短い…という悲しい事実があります。
消費額を上げるために
我々県民は、まずこれらの事実と向き合い、海外客の満足度を上げて再訪と滞在日数を上げ、消費額を上げるために、コト消費を中心とした観光コンテンツに磨きをかける必要があります。
インバウンド対策で最も難しいのはマーケティングです。マーケティングとは顧客目線で商品やサービス開発をすることですが、その顧客が日本人ではなく外国人であるために難しいのです。インバウンドマーケティングを機能させるためには、相手国の文化的・経済的背景まで把握し、自分達の独りよがりな判断を排除して取り組む必要があります。
その意味で、弊社がクライアント企業様と一緒にコンサルティングの現場で取り組んできたインバウンド分析や対策事例はきっとお役に立てると思います。是非読んでみてください。
築山 大
琉球経営コンサルティング