沖縄観光業の課題をあぶり出したコロナ危機

こんにちは。築山です。

沖縄のコロナウィルス感染者の増加が止まりません。最初の緊急事態宣言を出した後、新規感染者数は1ヶ月以上ゼロを更新していましたが、7月初旬から再び感染者が出始め、Go to キャンペーンの開始と同時に激増。累計感染者数は1,000人を突破し、これを書いている現時点で人口10万人あたりの感染者数は7日間連続で全国1位となっています。

8/9時点  データ提供:JX通信社/FASTALERT

主な感染経路は、旅行者による島外からの持ち込みと、米兵による米国からの持ち込みです。

前者に関しては、Go to キャンペーンに関して「背に腹は変えられない」観光関係団体が、来県自粛要請ではなく感染防止対策を強化して観光客を受け入れる方針を示したこと、知事のアナウンスも「来県自粛」ではなく「来訪の慎重な判断」を求めるにとどめています。しかし、実行性(強制力)のない「水際対策」しか講じることができず、拡大防止が出来ませんでした。


後者に関しては、米軍の人事異動の時期と重なり、日米協定によって、日本に赴任する米兵は「世界一の感染者数を誇る」米国から検疫や入国審査をせずに自由に入れること、7月4日の米国独立記念日に沖縄の各地に繰り出し大規模なパーティを開いていたことの関連性が取り上げられています。感染者が判明してから僅か数日で当時の沖縄の累計感染者数に並ぶほどの拡大スピードでした。また、感染者の行動履歴などの詳細情報も開示されていないため、県としても十分な拡大防止策を講じられない事情もあります。

 

沖縄の観光業界の思いと県民との乖離

実際は、稼いだ金を地元経済に還元できないザル経済であり、県民の約4割から「自分たちの生活向上には貢献しない」と思われている沖縄の観光業ですが、それでもなお県民総生産の約3割も依存しているという事実があります。



終戦直後に闇市として始まり、今では多くの観光客を迎え入れている那覇の国際通りの店主が「観光に依存し過ぎた。いまさら地元客に戻ってきてもらうのは難しいと思う」と吐露した心情が象徴するように、県民からの支持や満足度を後回しにしたまま肥大化したことが、沖縄の観光政策の最大の問題と失敗です。

これはコロナ禍前からずっとあった問題であり、コロナ危機によってあぶり出されたに過ぎません。結局、今回の感染拡大の第2波を受けて、沖縄県の経済(観光業界)と県民の健康(医療)の両立を目指した対策や、ジレンマを抱えた曖昧なアナウンス、そしていずれも中途半端な結果に陥ったことで、県民全員でそのツケを払っている状態になってしまいました。感染拡大防止に向けて協力が必要な中、様々な立場での対立や分断も深まっているようで心配です。

一方、感染封じ込めに成功した国々から経済活動を再開しています。米国メディアによると、台湾、ベトナム、韓国、タイなど、東アジアの国々が感染対策ランキング上位に名を連ねている一方で、感染拡大を繰り返しながら先行不明で疲弊している沖縄や日本の「周回遅れ感」は否めません。

 

ポストコロナ時代の「稼げる沖縄観光業」になるために

現在の危機を乗り切る対策を講じるのと同時に、再び同じ事態に陥らないため、先送りにしてきた「稼げる沖縄観光業」への構造改革にも着手しなければなりません。

「稼げる沖縄観光業」とは、沖縄固有の価値と旅行者との関係性に基づいた、来訪頻度や滞在中の活動と時間を重視した高付加価値の観光業であり、数よりも質を重視し、持続可能を目指し、県民への還元と支持を評価軸におく観光業です。

沖縄がハワイを目標やお手本にするのであれば、観光客数や表層的な部分を比べるのではなく、土地の開発規制(ゾーニング)や、彼らが毎年行っている州民アンケートとそれを観光業の評価にしている仕組みを学ぶべきでしょう。その根本には、自分たちの文化と自然こそがアイデンティティであり、守るべき観光資源であるという「アロハ・スピリット」があります。


現在、観光業に関連する弊社のクライアントとは、沖縄の普遍的価値に根ざした、観光客にも県民にも価値のある付加価値の高い観光コンテンツの企画を行っており、コロナ危機が収束した直後からスタートダッシュ出来る準備しています。

 

築山 大
琉球経営コンサルティング

 

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